主訴:ふらつき 倦怠感
散歩中に突然ふらつきと倦怠感を自覚して救急要請
BP88/56 HR36
徐脈で血圧も低い!循環器内科を呼んでペースメーカーを入れてもらわなきゃ!
ちょっと待った!循環器内科に相談するのは間違いじゃないけど、心疾患以外の可能性も考えておく必要があるよ!
「徐脈といえば循環器内科でペースメーカー」という考えは間違いとは言えないのですが、徐脈の原因が必ずしも心疾患とは限りません。
ここでは徐脈+ショックの鑑別と徐脈の対応の選択肢としてのプロタノールの使い方を解説していきます。
目次
徐脈+ショックの鑑別
ショックの鑑別は多いですが、徐脈+ショックとなると疾患はかなり限定されます。
- 心筋梗塞→完全房室ブロック
- 高カリウム血症
- 低体温
- 薬剤(βブロッカーなど)
- 副腎不全、甲状腺機能低下
心電図をとってⅡ、Ⅲ、aVFでST上昇がある!となれば、右冠動脈の心筋梗塞で完全房室ブロックなどが想定され循環器内科コンサルトが必要です。
しかし、徐脈だから必ず循環器内科コンサルトとは限りません。
高カリウム血症が原因であれば、まずはカルチコール投与やGI療法など、そして透析を考慮して腎臓内科をコールするということになります。
上記に挙げたものが否定されれば、いわゆる徐脈性不整脈がprimaryな病態である可能性が高く、永久ペースメーカーの適応となります。
逆に言えば、高K血症や薬剤などが原因の場合はそれが解除されさえすれば脈は戻るのでペースメーカーが必要であったとしても一時的です。
徐脈+ショックの対応:プロタノールの使い方
徐脈+ショックの場合は教科書的には経皮ペーシングの適応です。
ただ意識がある場合は鎮静が必要だったり使用のハードルは低くありません。
そこでまずはプロタノールをトライしてみるのは良い選択肢です。
【2-3ml/h】で持続静注
プロタノールの推奨投与量は0.005γ(μg/kg/min)です。
毎回計算するは面倒なので上記の希釈方法で準備しましょう。
プロタノールは1A(0.2mg)が1mlなので、プロタノール2ml+生食48mlで合計50mlとなるように希釈します。
体重50kgなら2ml/h、体重80kgなら3mlでだいたい0.005γとなります。
なので2-3ml/hの間で開始して適宜調整する、が使いやすいです。
以下の禁忌にだけ注意しましょう。
プロタノール開始しても反応がない場合や禁忌で使用できない場合はすぐに経皮ペーシングを準備しましょう。
- 肥大型心筋症による流出路狭窄
- ジギタリス中毒
- 他のカテコラミンとの併用
まとめ
徐脈+ショックの鑑別と、プロタノールの使い方について解説しました。
通常のショックとは異なる鑑別、対応になることが多いので別カテゴリーとして整理しておく必要があります。
一度で全て覚えることは難しいかもしれないので、実際に診療にあたる時に再度この記事を確認してもらえると嬉しいです。