幅広い症状、疾患の患者さんを診る救急当直を乗り切るためには、ベースとなる教科書・本が必要になります。
自分にあった本を選ぶのが基本ですが、「救急外来マニュアル」のような名前の本はたくさんあって、なかなか選べないかもしれません。
そこで毎年研修医を指導している救急医の立場から、これを買っておけばハズレは無い、いう本だけを厳選して紹介するので参考にしてください。
目次
研修医当直御法度第6版
日本のER型救急の生みの親、寺澤秀一先生の名著です。
注意点としては、初期研修医の最初の頃に読んでもあまり良さがわからない事です。
ですが、実際に患者さんを診療している最中、そして何例か経験を積んでから読み返すと、救急外来で考えるべき大切なことが全て書かれています。
後で読み返すたびに、「あ、こんな大事なことも書いてあったのか」と、必ず新たな発見があるすごい本です。
欠点としては、情報を極限まで削ぎ落としているので、ポイントが箇条書きになっていて、通読するのには向いていません。
症例を経験して、該当する箇所を見返す。そして重要な部分にマーカーやメモを追加することで自分だけのマニュアルにしていく。そんな使い方がおすすめです。
当直医マニュアル(2021)第24版
救急マニュアルの定番です。
この本のすごいところは毎年改定されている事で、常に新しい内容が追加されています。
またコンパクトなのも売りで、白衣やスクラブのポケットにも入り、持ち歩けます。
欠点としては文字がやや小さいことと(コンパクトなので仕方ないですが)、診断がついた後の記述が多いので、診断で悩む場合については他の本も参照する必要があります。
コンパクトにも関わらず、基本的な内容はほぼ網羅されているので、常に持ち歩きたい人にはおすすめです。
開講!神戸中央市民ER+ICUスクール
ER型救急で有名な神戸中央市民病院のスタッフを中心に作られたマニュアル本です。
救急外来でよく経験する症候について、救急医の思考過程を丁寧に解説しています。
また特徴的な内容としてはERだけでなくICUにおける基礎知識も1冊にまとまっている事です。
1冊でERとICUの基本が網羅できるという本は他には無いので、ICUにも興味がある、という人にはおすすめです。
マイナーエマージェンシー原著第3版
トゲの抜き方、鼻・耳の異物、目が痛い、など夜間の救急外来で困りそうなマイナー科の病態をほぼカバーしています。
マイナーエマージェンシーと言いながら、「けいれん」などマイナーを超えた領域も扱っています。
欠点があるとすれば本のサイズが大きいので、持ち歩けないことです。
それを差し引いても、買う価値があります。
たとえマイナー系救急の患者さんを診る機会が無かったとしても、自分や家族が困った時にも参考になるような、一家に一冊あってもいいくらいの名著です。
救急外来ただいま診断中!
おそらくここ数年では最も売れている救急外来の本です。
救急外来でよく経験する症候・病態についてエビデンスを踏まえて詳しく解説しています。
どちらかというとじっくり読み込んでいくタイプの本で、当直中にその場で参照するにはあまり向いていません。
当直御法度や当直医マニュアルを当直中の参照用にして、この本で腰をすえてじっくり勉強する、という使い方がおすすめです。
まとめ:どれを買うか迷ったら
救急当直に役立つ本を5冊に厳選して紹介しました。
救急外来で持ち歩けるコンパクトなマニュアルとしては
- 研修医当直御法度
- 当直医マニュアル2021
のどちらか1冊選んでおけば間違いありません。
余裕があれば「マイナーエマージェンシー」と「救急外来ただいま診断中!」の合計3冊買っておくと、初期研修医の間は救急外来に関してそれ以上本を買う必要は無いでしょう。
忙しい救急当直ですが、一緒にがんばっていきましょう!