院内発症のVFに対してアドレナリン投与の適切なタイミングは?

研修医・若手医師

救急外来でST上昇のある心筋梗塞を診断し、循環器内科コンサルト 、カテ室へ移動する準備をしていると・・・

VFです!すぐに除細動しますね!
「・・ドン!」
胸骨圧迫再開してください!

ルートもあるし、アドレナリン入れますか?

いや、少し待って!次の波形確認でVFが続いていたら2回目の除細動実施後に考えよう!

(CPAの時はアドレナリンはすぐに入れたほうがいいんじゃなかったっけ??)

ACLSのVFアルゴリズムではショック2回後にアドレナリン投与

そもそも、VFの時のアドレナリン投与のタイミングっていつでしたっけ?

1回目のショックの後?それとも2回目の後?3回目?・・・

AHAの蘇生ガイドライン2020が発表されていますが、VF時のアドレナリンの位置づけを確認していきます。

下にACLSのアルゴリズムの一部を引用していますが、AHAのガイドラインではVF/無脈性VTではショック2回後にアドレナリン投与する事になります。

推奨事項のところを読んでいくと「アドレナリンの早期投与」という項目があります。

そこには

「ショック適応リズム(VF/無脈性VT)での心停止の場合,初回の除細動が不成功後にアドレナリンを投与することは妥当としてよい。」

と記述されています。

この文言だけを読むと「あれ?初回(1回目)のショックの後にアドレナリン投与でいいのでは?」と思うかもしれませんが、「初回除細動が不成功後」ということは必然的にショック2回目の後となります。

これだけ読んで「それはそうだ」と理解できた人はACLSを良く理解している人です。

どういうことか、さらに解説していきます。

なぜショック2回目の後にアドレナリン投与なのか?

VFの対応として最も重要なことは①早期除細動と②胸骨圧迫の中断を最小限にすることです。

なので初回ショック後は波形の確認をせずに胸骨圧迫を再開する事が推奨されています。

そして2分後の波形確認の時点で初回除細動が不成功かどうかが判明する事になるのですが、そこでVFが継続していれば速やかに2回目のショックを実施します。

アドレナリンはこの2回目のショックの後に投与する、ということになるわけです。

少しややこしいですが、除細動が最優先、波形確認せずに胸骨圧迫を再開という原則を守ると、「初回除細動不成功後に投与」は2回目のショック後に必然的になるというわけです。

院内発症の目撃あるVFで起こりがちな早すぎるアドレナリン投与

そもそも院外発症のVFの場合はこのアドレナリン投与のタイミングの問題はあまり起こりません。

なぜならルートが確保されていない状態からスタートするため、ショック2回終わるまでの短時間でアドレナリン投与する事がそもそもできない場合が多いからです。

このアドレナリン投与のタイミングの問題が発生するとすれば院内発症の目撃あるVFです。

急性心筋梗塞を診断して、カテ室への移動までの間や、カテーテル中、そしてCCUなどでの入院管理中などです。

この場合はルート確保されているため、1回目の除細動の後の2分間に胸骨圧迫している最中にアドレナリン投与しようと思えばできてしまうんです。

ではアドレナリン投与を2回目の除細動の前にしたらダメなのか?という疑問が起こります。

その疑問に関する研究について簡単に紹介します。

1回目のショックの直後にアドレナリン投与すると予後悪化する?

Early administration of epinephrine (adrenaline) in patients with cardiac arrest with initial shockable rhythm in hospital: propensity score matched analysis. BMJ. 2016 Apr
PMID: 27053638

2016年にBMJに投稿された研究で、院内発症のVF/無脈性VTに関して、初回ショックから2分以内にアドレナリン投与された群とそれ以降に(つまり2回目のショック後)にアドレナリン投与された群で予後を比較しています。

介入研究ではなく、前向きコホートでpropensity score matched analysisです。

詳細は省きますが、初回ショックから2分以内の早期にアドレナリン投与をされた群のほうが、生存退院や神経学的予後などのアウトカムが悪化した、というのです。

そもそも約半数の症例で初回ショックから2分以内にアドレナリン投与という、ガイドラインのアルゴリズムから逸脱した処置がされていた、というのも少し驚きです。

やはり院内発症のVFだと早いタイミングでアドレナリン投与されがち、という事実も明らかになったという事です。

そして初回ショックから2分以内にアドレナリン投与するという事のリスクについて考える必要があります。

冷静に考えると、初回除細動が成功している可能性もかなり高いわけで、それを確認する前にアドレナリン投与してしまうと、心拍再開しているのにアドレナリンが投与されるわけで、血圧上昇や不整脈を逆に誘発する可能性などもあるわけです。

少なくとも初回の除細動が不成功であることを確認し、2回目、または3回目以降にアドレナリン投与を検討するというのが無難でしょう。

そして、2回以上除細動に失敗しているのであればアドレナリンだけでなく、アミオダロン投与やECPRの実施を検討する事がより重要です。

まとめ

院内発症のVFに対してアドレナリンをいつ投与するか?について解説しました。

ガイドラインのアルゴリズムでは2回目のショック後に投与することになっており、

2016年にBMJに発表された院内発症のVFでの観察研究では1回目のショックから2分以内にアドレナリン投与すると予後が悪化する可能性が報告されています。

ショック適応リズム(VF/脈無しVT)に対するアドレナリンのタイミングに関して結論は得られていないのが実際のところですが、あまり早いタイミングでアドレナリンを投与することは控えたほうが無難かもしれません。

まずは迅速な除細動と絶え間ない胸骨圧迫が基本になります。

以上参考になればうれしいです。

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2020年4月16日