来院3日前からの後頚部の痛みあり。
徐々に悪化して少し首を動かすだけでも痛くて動けなくなってきたため救急要請。
来院時発熱38.2℃認める以外はバイタルサイン異常無し。
発熱と首の痛みがあるっていうし髄膜炎なのかな・・・
確かに髄膜炎は鑑別にあがるかもしれないけど、頚部を回旋すると痛がって動かせないね。Crowned dens症候群かもしれないし頚椎CTも撮ってみよう！
クラウンデンス症候群？？
目次
Crowned dens症候群とは
Crowned dens症候群とは、頚椎の環軸関節の偽痛風です。
軸椎歯突起周囲に ピロリン酸カルシウム（CPPD)が沈着することで発症します。
Crowned dens症候群の診断基準は明確なものが示されていませんが、「急性発症の頸部痛に軸椎歯突起周囲の石灰化を伴うも の」としている文献が多いようです(1)。
膝関節などの偽痛風であれば「関節穿刺を行なってCPPDを検出する」ことで診断しますが、環軸関節では穿刺の手技が難しく一般的ではありません。
実際にCrowned dens症候群を疑って透視下に環軸関節穿刺を実施し、CPPD)の結晶を認めたという報告もありますが(2)、一般的には症状と画像診断を合わせて診断するのが現実的です。
症状の特徴をざっくり挙げると、
- 発熱＋頚部痛で受診することが多い
- 高齢者に多い
- 後頚部痛が多い
- 頭痛を合併することもある
- 発熱は無いこともある
などです。
「発熱＋頚部痛」というと“やっかいな鑑別診断”がありそうですが、特徴的な身体所見について解説していきます。
鑑別診断と特徴的な身体所見
発熱・頚部痛をきたす鑑別診断として以下の疾患が挙げられます。
- 髄膜炎
- リウマチ性多発筋痛症
- 化膿性脊椎炎
- 側頭動脈炎
発熱が無いこともあるので変形性頚椎症なども鑑別となりえるかもしれません。
ただし、実際に鑑別に非常に苦労するかというと必ずしもそうではありません。
それは特徴的な身体所見と画像所見があるからです。
特徴的な身体所見として“頚部の回旋時の痛み”があります(3)。
多くの文献で頚部の回旋時の痛み、それに伴う回旋制限が報告されています。
ポイントは他動的に頚部を回旋させてみることです。
「自発的に首を振ってもらおうとしたができない」、となると髄膜炎のjoltaccentuationと紛らわしいです。
Crowned dens症候群の回旋制限は「ゆっくり他動的に動かしても痛みで動かせない」というのが特徴です
頚部の回旋時痛・回旋制限は髄膜炎でみられる項部硬直やjoltaccsentuationとは異なるので、鑑別に有用です。
Crowned dens症候群の画像診断
上図のようにC2の歯突起周囲に石灰化を認めるのが典型画像です。
“冠状の石灰化”と表現されることもあります。
Crowned dens症候群の治療
Crowned dens症候群の治療は他の関節の偽痛風と同様にNSAIDs投与です。
高齢者に多い疾患であり腎機能などに懸念があればアセトアミノフェンを使用することも妥当です。
一般的には1−２週間程度で症状が落ち着く予後良好な疾患です。
痛みで動けない、他の鑑別が否定しきれないなどの理由があれば入院適応となります。
まとめ
Crowned dens症候群の基本について解説しました。
他の関節と違って関節穿刺で診断できないので、身体所見と画像診断がより重要になります。
身体所見で頚部の回旋制限、CTで歯突起周囲の石灰化がみられるのがポイントです。
【参考文献】
- Goto S. Crowned Dens Syndrome. J Bone Jt Surg 2007; 89(12):2732.
- Kobayashi T, Miyakoshi N, Konno N, Abe E, Ishikawa Y,Shimada Y. Acute neck pain caused by arthritis of thelateral atlantoaxial joint. Spine J 2014;14(9):1909-13.
- Sekijima Y, Yoshida T, Ikeda SI. CPPD crystal deposition disease of the cervical spine:A common cause of acute neck pain encountered in the neurology department. J Neurol Sci 2010;296(1-2):79-82.
- Oka A, Okazaki K, Takeno A, et al. Crowned Dens Syndrome: Report of Three Cases and a Review of the Literature. J Emerg Med. 2015;49(1):e9–e13.
