赤ちゃんが泣き止まない、なんて普通じゃないの?
救急外来にそんな主訴で来られても鑑別なんて思い浮かばない・・
と思った方に向けた記事です。
実は救急外来に“泣き止まない”という主訴で来院する乳児は珍しくありません。
目次
赤ちゃんが泣き止まない原因の覚え方 ITCRIESS
赤ちゃんが泣き止まない、の原因は多いです。
赤ちゃんにとって不快な症状がある時の意思表示の手段は泣くしかないので当たり前ですよね。
覚えかたとして有名なものとしてITCRIES(S)があります。
- I:Infection(meningitis, osteomyelitis, UTI)
- T:Trauma,Testicular torsion
- C:Cardiac(PSVT,heart failure)
- R:Reflux,reactions to medications,
reactions to formulas - I:Immunisations, Insect bites
- E:Eye(corneal abrasions, ocular foreign bodies)
- S:Surgical(volvulus, intussusception, inguinal hernia)
- S:Strangulation(hair/fiber tourniquet)
やや無理やり感があるゴロ合わせですが、たくさんある鑑別を整理するには便利かもしれません。
頭から足の先まで系統的に整理する
他の主訴でも使うことがありますが、頭から足の先へと病態を整理する方法もあります。
- 頭頸部
- 胸部
- 腹部(消化管)
- 会陰部
- 四肢
- 皮膚
- 代謝疾患
- その他
ここからは各部位の疾患の一部について簡単に解説していきます。
・角膜潰瘍(頭頸部)
赤ちゃんは無意識のうちに顔を触ったり、目をこすったりします。
そのときに指や爪が眼に当たったて角膜という眼の表面に傷がついて痛みが出ることがあります。
赤ちゃんの爪切りは大事なのですが、子育て経験がある方はわかると思いますが、こまめに切るのはなかなか大変です。
・不整脈(PSVT)(胸部)
PSVTが出ると、大人であれば動悸を感じます。赤ちゃんは不快感を全て泣く事で表現するので、これも泣き止まない原因となりえます。
泣いているだけでも脈が早くなりがちですが、明らかに心拍が速い場合は心電図モニターをつける事が重要です
・腸重積(腹部)
一般的には生後6ヶ月以降から発症が増えとされます。
血便が出る事が有名ですが、発症初期はただ泣くだけの事も多いので、泣きやまない赤ちゃんが受診したら必ず腸重積を鑑別に入れましょう。
・鼠径ヘルニア(会陰部)
大人の病気のイメージがあるかもしれませんが、小児でもありえます。
鼠径部の皮膚が膨隆していてそこを触ると痛がるようなら鼠径ヘルニアを疑います。
・おむつかぶれ(皮膚)
「かぶれ」というと痒いようなイメージかもしれませんが、おもつかぶれがひどくなると、皮膚がヤケドのようにただれます。
そこにおしっこやウンチが触れるととても痛いのです。
僕も自分の娘がこの状態になり(しかも妻の出張中に)おしっこやウンチのたびにギャン泣きする娘を前に、辛い思いをしました。
・ヘアターニケット(四肢)
髪の毛や糸くずが、赤ちゃんの指にからまり血液が流れなくなってしまい痛みが出ます。
髪の毛が指にからまるなんて自然に起きるの?と思うかもしれませんが、僕も実際の患者さんで経験があります。
原因ははっきりしたことはわかっていませんが、産後のお母さんの抜け毛が増えることも一つの要因かもしれません。
診察時に泣き止んでいるか、泣き続けているかを手掛かりにする
診察時にも泣き続けているか、泣き止んでいるかは重要な情報です。
診察時に泣き止んでいる
診察時に泣き止んでいる、ということは痛みなどの不快な症状がいったん落ち着いた、または改善した、ということを表しています。
間欠的啼泣、といば腸重積が有名ですよね。なので泣き止んだとしても腸重積は鑑別に残ります。
診察時に泣いていない場合として、特定のシチュエーションでのみ泣くという場合があります。
骨折で痛みがあるが、四肢を触らなければ泣かない、という場合もありえます。
鎖骨骨折は抱っこしようとした時に泣きます。
赤ちゃんの両脇に大人の腕が入ると鎖骨が動くので痛いのです。
外傷の場合は転落などのエピソードの後から泣く、という病歴で来院されるので気付きやすいですが、虐待の場合は外傷エピソードが聴取できないことがあるので注意が必要です。
外傷のエピソードが無くても(親が目撃していないだけの場合もあり)外傷も念頭において全身を観察しましょう。
診察時に泣き続けている
泣き続けている、ということは痛みや不快感が持続的に起こる疾患ということになります。
代表的なものとして、感染症や代謝疾患などは症状が持続的にあることが多いので、赤ちゃんは泣き続けることが多いです。
それ以外でも間欠的に泣く病態で、診察時はたまたま泣いている時間帯だった場合や、単に診察が嫌で泣いているという場合もありえます。
泣き続けている場合は、まず全身を診察して明らかな異常がなければ、いったんお母さんと2人になってもらって泣き止むかを観察するのも手です。
まとめ
赤ちゃんが泣き止まない(Crying infant)の診かた、について解説しました。
原因となる疾患が多いので、難しいのですがここで紹介したITCRIESSや頭から足先へなどを活用してみてください。
泣き止まないという主訴に限らず小児の診察では、服を脱がせて全身を観察する、が基本です。