腹部大動脈瘤を持つ人が吐血・下血で受診したら造影CTを撮ろう

研修医・若手医師

大量の吐血だ!上部消化管出血で間違いないし、すぐに消化器内科コンサルトしなきゃ・・

この人、AAAの手術歴があるね。Aorto-enteric fistulaかもしれないし急いで造影CTを取ろう!

Aorto-enteric fistula??

目次

大動脈瘤が消化管に穿通|Aorto-enteric fistulaとは

Aorto-enteric fistula(AEF)とは、大動脈瘤が消化管に穿通する病態です。

最も多いのは腹部大動脈瘤(AAA)が十二指腸に穿通するパターンです。

これは解剖学的に十二指腸が後腹膜にあるため、腹部大動脈瘤と接しやすいからです。

十二指腸以外にも頻度は下がりますが小腸や大腸に穿通する症例の報告もあります。

穿通が起こる機序については、腹部大動脈瘤の拡大による血管壁の脆弱性や、腫瘍の浸潤、十二指腸憩室などがあるようです。

また、AAA手術後の合併症として起こる事もあり(Secondary AEF)、頻度としてはむしろこちらの方が多いようです。

AAAがすでに指摘されている人やAAA術後の消化管出血では、このAorto-enteric fistulaを鑑別に必ず挙げる必要があります。

腹部大動脈瘤を持つ人が吐血・下血で受診したら造影CTが必須

一般的には上部消化管出血を疑っても造影CTは必須ではありません。

出血源が上部か、下部か悩むような症例は造影CTが必要な場合があります。  

ですが、このAorto-enteric fistulaの診断には造影CTが必須です。

大動脈瘤から消化管内への造影剤の漏出像を確認するためです。

大動脈瘤と消化管が穿通しているとなれば内視鏡での止血は困難です。

消化器内科ではなく、心臓血管外科にコンサルトする事になります。

開腹術と血管内ステントによる治療が選択肢となりますが、どちらを選択すべきかは患者さんの状況や施設の方針にもよるでしょう。

【参考文献】

  • Partovi S, Trischman T, Sheth RA, et al. Imaging work-up and endovascular treatment options for aorto-enteric fistula. Cardiovasc Diagn Ther. 2018;8(Suppl 1):S200-S207. doi:10.21037/cdt.2017.10.05

まとめ

AAAの既往がある人が吐血・下血で受診したら大動脈瘤と消化管が穿通するAorto-enteric fistula(AEF)を鑑別に挙げよう。

AEFであれば消化器内科ではなく、心臓血管外科へコンサルトを!

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