骨折の緊急度を判断する|整形外科医を夜間に呼ぶべき骨折とは

研修医・若手医師

「骨折ってあんまり自信ないな」

「骨折してるけどこれって入院したほうがいいの?夜中に整形外科の先生呼んだ方がいいのかな?

初期研修医であまり外傷を診る機会が無い人、また外傷をあまり診ないまま後期研修医になってしまった人は骨折診療に漠然とした不安があるのではないでしょうか?

ここでは骨折を診た時にとりあえず大きな失敗をしないために考えるべきことについて短くまとめています

「骨折大好き!」という人と整形外科の先生はそっとブラウザを閉じてください・・・

目次

骨折を診る時はまずは緊急度を判断しよう!

骨折を診る時はまず緊急度を判断しましょう。

具体的には次の3つのどれに当てはまるかを考えます。

  1. 夜中でもすぐに整形外科医を呼ぶべき骨折
  2. 整形外科医を夜中に呼び出さなくてもいいけど入院させておく必要がある骨折
  3. 翌日か週明けに整形外科外来受診で大丈夫な骨折

夜中でもすぐに整形外科医を呼ぶべき骨折

夜中に専門医を呼び出すのってプレッシャーですよね・・・

よくわからず相談したら「こんなんで夜中に電話しやがって!」なんて言われたらどうしようなんて不安になるものです

ですが、夜間に整形外科を呼ばなければならない骨折は限られます。

  • 開放骨折
  • 神経・血管損傷を伴う骨折
  • 不安定型骨盤骨折
  • 大腿骨骨幹部骨折

開放骨折は感染のリスクが高く、早期に洗浄・デブリが必要ですので夜中でも整形外科を呼んで手術する必要があります

厳密には創がごく小さく、汚染が少ない開放骨折ではそのまま縫い閉じる場合もありますが、非整形外科医のみでその判断をする必要は無いと思います。

神経損傷、血管損傷を伴う場合も緊急手術の適応になるため迷わず整形外科医を呼びましょう。

骨折を診たら、神経症状と動脈の拍動が触れるかを確認するクセをつけよう!

上記の骨折に整形外科医が夜間対応できない病院であれば、対応できる病院へ転送しましょう

夜中に整形外科医を呼び出さなくてもいいけど入院させておく必要がある骨折

整形外科医が院内に当直していないのであれば、呼び出さなくていいけど入院はさせておく必要がある骨折の代表が

大腿骨頸部骨折です

大腿骨頸部骨折は基本的には手術するまでは安静が必要です。大腿骨頸部骨折にはGarden分類というやつがあるのですが、簡単にまとめると安定型か不安定型に分かれます。

安定型であればスクリューを入れるだけの手術だったのに、動いてしまって不安定型になってしまうと人工骨頭置換術が必要になります。

要は動いちゃうと骨がズレて、より侵襲的な手術が必要となってしまうということです。

大腿骨頸部骨折は見逃しやすい骨折でもあるので、骨折診療に自信が無い方は

大腿骨頸部骨折を見逃さないための3つのコツも参照ください

手術適応でない骨折でも圧迫骨折や肋骨骨折など痛みで動けない、という場合も入院適応になります 

翌日または週明けに整形外科外来受診で大丈夫な骨折

ここまでに触れた以外のほとんどの骨折がこれに当てはまりますが、あえて大雑把にまとめれば

上肢の骨折全般と下腿より末梢の骨折です

上肢の骨折であれば基本歩けますし、下腿より末梢の骨折であれば松葉杖で歩けます。もちろん翌日以降に手術を要する可能性はありますが、シーネ固定さえしておけば帰して大丈夫です。

もし骨折診療に慣れてきたら、帰せる骨折の中で手術が必要な骨折かどうかも整理できるとより良いです。

そこまで判断できれば紹介する医療機関が適切に判断できます。

もし明らかに手術不要と判断できれば整形外科のクリニックへ紹介で良いでしょう。

迷った時は自院の整形外科を一度受診してもらい、整形外科医からクリニックへ紹介してもらうで全然良いと思います

まとめ

骨折をみたらまずは緊急度をもとに以下の3つに分類して整理していきましょう!

1.夜中でもすぐに整形外科医を呼ぶべき骨折
 ・開放骨折
  ・神経/血管損傷を伴う骨折
・不安定型骨盤骨折
  ・大腿骨骨幹部骨折

2.整形外科医を夜中に呼び出さなくてもいいけど入院させておく必要がある骨折
 →大腿骨頸部骨折など

3.翌日か週明けに整形外科外来受診で大丈夫な骨折
 →上肢の骨折全般と下腿より末梢の骨折

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