ランダム化比較試験(RCT)とは|RCTの3つの利点を解説

研修医・若手医師

医学論文を読むにあたって、ランダム化比較試験(RCT)の理解は必須です。

ここでは

・RCTって何?
・RCTは聞いたことあるけど何がそんなにすごいの?

という人を対象に

ランダム化比較試験(RCT)とは何か?という基本から、そしてより深く理解するためにその利点を3つあげて解説していきます。

なお別記事でRCTの3つの欠点も解説しているので、合わせて読んでいただければより理解が深まります。

それぞれの記事を読むのに5分もかからないので時間が無い人でも大丈夫です!

目次

ランダム化比較試験(RCT)とは

ランダム化比較試験(RCT)とは、

研究対象をランダムに2つの群に分けて、治療などの介入を行う群と、プラセボ(偽薬)や標準治療を行う群とで、死亡率などの結果に差が出るかを比較する研究デザインです。

なぜこんな面倒な方法をとるかというと、なんとなく分けた(非ランダム化した)2つの群を比較しても、何も結論を出すことができないからです。

なぜ何も結論を出せないか?

その疑問は、ランダム化比較試験の利点を知れば理解することができます。

ランダム化比較試験(RCT)の3つの利点

ランダム化比較試験(RCT)の利点は以下の3つです。

  • あらゆる交絡因子を調整できる
  • 因果を推定できる
  • 統計解析がシンプル

あらゆる交絡因子を調整できる

RCTでは、比較する2つの群の交絡因子を揃えることができます。

「交絡因子」って何?と思った方も難しくないので安心して下さい。

医学論文を例に説明します。

Aという薬が死亡率を改善するかを調べるためにプラセボ(偽薬)と比較する研究を行なったとします。

結果はAを投与した群では死亡率が改善しました。

ところが、後から調べてみるとプラセボを投与した群のほうが、年齢が高かったり、糖尿病や腎不全などの合併症が多かったのです。

この年齢や糖尿病などの合併症が「交絡因子」に当たります。

RCTでランダム化を行うことによって、この交絡因子が2つの群で同等になるように調整することができます。

そして、このランダム化という方法の最もすごいところは「未知の交絡因子」まで調整できてしまうことです。

先ほどの例で挙げた交絡因子は年齢や合併症など、「死亡に影響を与えることがすでにわかっている」そして「測定が可能な」ものでした。

ですが、ランダム化をすることで現時点で知られていない因子や測定できない因子も理論上調整することができるのです。

例えば現在の技術では測定できない“死亡に影響しうる遺伝子情報”などの要素が仮にあったとしても、それも調整できてしまうのです。

ここがRCTの最大の利点と言っても過言ではありません。

因果を推定できる

RCTが未知の交絡因子をも調整する、という特性があることから、因果を推定することができます。

「因果を推定する」とは何か?

これは「Aが起きた、そしてBが起きた」という事実から「Aが起きた、だからBが起きた」とすることです。

因果に対する言葉として「相関」という言葉があります。

例えば

とある町でコウノトリの数が5年間で2倍になった。
そしてその町で生まれる赤ちゃんの数が同じ5年間で2倍になりました。

では「コウノトリの数が増えたから、赤ちゃんが増えた」と結論づけれらるでしょうか?

さすがにそんなわけない、と誰でもわかると思います。

これは「相関」はあるが「因果」は不明である(理論上は因果は無いことは明らかですが)、という状態です。

実は、コウノトリの保護政策と少子化対策が同時期に実施された、という背景がありました。

コウノトリと赤ちゃんの数という明らかに因果関係無いとわかる場合は良いのですが、薬の効果などの場合は相関関係を因果と混同してしまいがちです。

RCTによってあらゆる交絡因子を調整した上で、結果に差が出れば、そこではじめて因果が推定される(完全な証明とは言えませんが)ということになるのです。

統計解析がシンプル

RCTの3つ目の利点は統計解析がシンプルになるということです。

もう少し正確な表現をすれば「単変量解析で結論を出せる」ということになります。

単変量解析というのは、t検定、Mann-WhitneyのU検定、カイ2乗検定などです。

t検定、Mann-WhitneyのU検定って何?という方は、t検定とMann–WhitneyのU検定|医学論文を読む・書くに必要な統計の基礎知識を数式を使わず解説①、の記事も良ければ参考にしてください。

RCTはランダム化によって交絡因子を調整しているので、結果を単変量解析でシンプルに比較することが可能です。

一方、ケースコントロール研究など、後ろ向きの研究ではランダム化ができないので、交絡因子を統計解析の手段で調整する必要があります。

これには多変量解析を行います。

ただし多変量解析によって調整できるのはあくまでも「すでにわかっていてかつ測定可能な要因」です。

ですので、交絡因子の調整には限界があり、有意差が出たとしてもあくまでも「相関」を示すにとどまる、ということになるのです。

簡単にまとめると

RCTでは事前にランダム化によって交絡因子を調整しているので、統計解析がシンプルになる。

後ろ向き研究ではランダム化していないので統計解析によって交絡因子を調整する必要がある(解析が複雑になる)。

ということです。

先に交絡を調整するか、後から調整するかの違いということもできますね。

数式が苦手な人向けの統計学を理解するための本

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RCTや多変量解析など、統計の基礎から勉強してみたいけど数式は苦手という人にぴったりの本が「統計学が最強の学問である」です。

見た目はビジネス書のような感じですが、中身はゴリゴリの医療統計学の解説書です

読み物を読む感覚ですらすらと読めますが、自然に統計学の基礎が理解できる不思議な本です。

この本が特にわかりやすいのは、単変量解析も多変量解析も全て「一般化線形モデル」という一つの概念としてシンプルに解説しているところです。

「一般化線形モデル?何のこっちゃ」と思うかもしれないですが是非一度読んでみてください。感動します。

まとめ

ランダム化比較試験(RCT)の利点を3つ挙げて解説しました。

RCTの利点を1文にまとめれば、①未知の交絡因子も調整することで②統計解析をシンプルにし③因果を推定することができる、です。

RCTは因果が重要な治療介入の効果を評価するための協力な研究デザインですが、一方で弱点もあります。

より深く理解したい方は、ランダム化比較試験(RCT)の3つの欠点とは|RCTの限界を知っておこう、の記事もよければ参考にしてください。

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