尿路結石の患者さんには水分摂取を指導すべきか?

研修医・若手医師

尿路結石の患者さんを帰宅させる前の指導で“水分摂取の指導”ってしてますか?

指導している、という方が多いとは思いますが、なんのためにしているのかって考えたことあるでしょうか?

水分摂取したらおしっこが増えて早く石が流れる?

水分摂取は予防のためなんじゃなかったかな?

この辺があいまいな方はぜひ記事を読み進めてください。

目次

尿路結石での水分摂取の目的は「排石促進」ではなく「再発予防」!

「水分をとれば早く石が出ますよ」という説明は正しくない、ということになります。

これは研修医の先生が勘違いしやすいポイントかもしれません。

 Cochraneのsystematic reviewにおいて少ない人数でのRCTですが輸液負荷2-3Lや利尿薬による尿量増加は痛みの改善、自然排石までの期間などを改善しなかったと結論づけられています。 

点滴で急速に水分を入れても変わらないのであれば、経口で水分をがんばって飲んだとしても結果は変わらないはずです。

十分な水分摂取を継続的に行うことができれば、再発率を減少することができる

十分な水分摂取を行うことで一定の再発率減少効果があることがいくつかのRCTで示されています。
Borghi L et al. J Urol 1996;155:839–843. [PubMed: 8583588]

1日2000ml以上の水分摂取を5年間行ったところ再発率が12% vs 27% P=0.008)と減少したとのことです。

確かに有意差を持って再発率が減少していますが、食事以外に水(アルコールやソフトドリンク除く)を2L毎日5年間飲むことはどれくらい現実的でしょうか?

プロトコール遵守率については不明ですが、「臨床研究に参加している」という意識が無いと難しいような気がします。

また高齢者になると低Na血症や心不全の懸念もあります。

個人的にはあまり強くは勧められないかと思ってます。(自分なら続けられる気がしません)

ただ予防目的の水分摂取については日本泌尿器科学会のガイドラインでも推奨されてますし、「尿路結石は地獄の苦しみなので強い意志を持って1日2Lの水分摂取を勧めます」という意見はもちろん妥当です。

患者さんに水分摂取を指導するのであれば正しい方法と期待できる効果を説明する必要があります。

尿路結石の排石促進の有効性が示されている薬は(おそらく)無い

排石促進に関しては現時点(2020年2月)でのガイドラインではタムスロシンが唯一「エビデンスがあるとされている薬」だと思います(日本で尿路結石に対する保険適応無し)。

しかし2018年6月のJAMA internal medicineに掲載されたRCTでは直径9mm未満の結石についてはその有効性が否定されており、著者らはガイドラインの改定を提案しています。

JAMA internal medicineの論文へのリンク

もともとのタムスロシンの根拠となったRCT、メタアナリシスはより大きなサイズの石に対してのものであったため、全てのサイズの結石に無効とまでは言えないかと思います。

個人的には使い慣れていないかつ保険適応が無い薬なので処方していません。

ちなみにウロカルンは、ガイドラインでの推奨はC1(有効性を示す研究は無いが、否定する根拠も無い)ですので、「毒にも薬にもならない」の範疇かと思います。

まとめ

尿路結石の患者さんに水分摂取を推奨する理由、について解説しました。

予防のために水分摂取をするのであれば、十分な量を長期間続ける必要がある、ということをしっかり説明しましょう。

また排石促進についてはエビデンスのある治療は限られているのが現状です。

救急外来ではしっかりと鎮痛を行う、泌尿器科へ適切に紹介するが最も大切です。

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2020年4月16日