救急外来でのショックの対応、病棟での急変対応は時間が勝負です。
考えることも大切ですが、同時に「まず動けるか」が重要になります。
・病棟の急変時の対応が不安な人
に向けて
ショックや急変を目の前にした時の合言葉として「さるもちょうしんき」を紹介し、
・次の一手はどうするか?
を救急医がシンプルに解説します。
目次
「さるもちょうしんき」とは
「さるもちょうしんき」(サルも聴診器?)といってもなんのこっちゃという感じですが、ショックや急変の時にまずこれだけはすぐにやろうという行動の頭文字からとった語呂合わせです。
- さ:酸素投与
- る:ルート確保
- も:モニター(ECG,SpO2)
- 聴:超音波 (Pump/Tank/Pipe)
- 診:12 誘導心電図
- 器:胸部X線(ポータブル)
内容だけ見れば、別に特別なものはなくむしろ「あたりまえ」のものばかりと感じるかもしれません。
救急外来であれば状態が悪い人の場合は黙っていても看護師さんが酸素やモニターをつけてくれることが多いでしょう。
ですが、特に病棟の急変時などはこの「あたりまえ」がすぐに出てこないんです。
まずこの6つを準備しながら、病歴・身体診察を素早くとって病態を診断していく事になります。
ショックの原因とエコーの活用
「さるもちょうしんき」でとりあえず最低限の処置・検査の準備をしながら、病態を診断していきます。
- 心原性ショック
- 低容量性ショック(出血性ショックなど)
- 血管分布異常性ショック(敗血症性ショックなど)
- 閉塞性ショック(肺塞栓・緊張性気胸など)
これらのどのタイプのショックなのか、原因が何かを診断することで適切な治療につながっていきます。
これには特にエコーを活用することが重要であり、Pump/Tank/Pipeをチェックします。
- Pump=心収縮、右室拡大、心嚢液貯留
- Tank=腹腔/胸腔エコーフリースペース、下大静脈
- Pipe=大動脈、大腿/膝窩静脈
上級者になればこれに加えて気胸・肺水腫もみることができます。
「さるもちょうしんき」の次の一手
ちょうしんき(超音波、心電図、胸部レントゲン)で診断がつかない、もしくは大動脈解離や肺塞栓が疑われるという場合にはCTをとることになります。
ただし、消化管出血による出血性ショックについてはCTをとっても診断できるとは限りません。
出血性ショックを少しでも疑った場合は直腸診はすぐにできるのでやっておきましょう。
最後に福井大学の寺澤先生に教えていただいた言葉を紹介します。
「原因のわからないショックをみたら、敗血症か肺塞栓を考えましょう」
造影CTまで行ってもなおわからないショックであれば敗血症を考えて血液培養と抗菌薬投与を行うことを考慮しましょう。
まとめ
ショックや急変時にまずすることを「さるもちょうしんき」の語呂合わせで覚えましょう。
語呂合わせなんてなんかカッコ悪い
なんて思うかもしれませんが、予期せぬ急変など、とっさに動かなければいけない時にきっとあなたとあなたの患者さんを助けてくれます。