血液ガスの読み方の基本|酸塩基平衡の解釈【初心者向け】

看護師さん

“血液ガス”というだけあって、ガス=呼吸を評価することが一つの目的です。

ですが救急外来や病棟急変などで「とりあえずガスをとろう」というときには、呼吸だけでなく酸塩基平衡の評価も目的となります。

ここでは看護師さんや学生、初期研修医などの初心者むけの血液ガスの読み方について、酸塩基平衡に絞って解説していきます。

血液ガスを読む手順

酸塩基平衡を解釈するための血液ガスを読む手順は以下の5つのステップです。

  1. まずpHを確認|アシデミアかアルカレミアか
  2. CO2とHCO3の値を確認する|呼吸性か代謝性か
  3. 代償が適切かを判断する
  4. アニオンギャップ(AG)を計算する
  5. 補正HCO3を計算する

この順番の通りにやることが重要です。

順番に解説していきますね。

まずpHを確認|アシデミアかアルカレミアか

pHの正常範囲
pH:7.35-7.45

まずはpHが正常範囲7.35-7.45の間かを確認します。

7.35未満であればアシデミア7.45以上であればアルカレミアと表現します。

アシデミアとアシドーシスの違いは“絶対値”と“ベクトル”の違いです。

アシデミアは“pHの値が低い”という状態を指し、アシドーシスは“酸性に向かう病態”を指します。

アシドーシスとアルカローシスが混在した結果、pHが正常範囲になることもあり、その場合はアシデミアでもアルカレミアでもない、というわけです。

 ポイント
pHが正常範囲でもアシドーシスやアルカローシスが存在する場合もある。

CO2とHCO3の値を確認する|呼吸性か代謝性か

CO2とHCO3-の正常範囲
CO2:40±5, HCO3:24±2

CO2とHCO3-を見て、呼吸性か代謝性かを判断していきます。

ここで重要な考え方として、過代償は起こらないという前提です。

例えば、代謝性アシドーシスの呼吸性代償でCO2が低下したとしても、そのせいでアルカレミアにまではならない、ということです。

なのでアシデミアがあればまずはアシドーシスがあるという前提で次のステップへ進みます。

アシデミアがあってHCO3-低下があれば代謝性アシドーシス、CO2上昇があれば呼吸性アシドーシスとなります。

アルカレミアがあってHCO3-上昇があれば代謝性アルカローシス、CO2低下があれば呼吸性アルカローシスとなります。

代償が適切かを判断する

予測CO2の簡易式(代謝性アシドーシスの代償)
予測CO2=HCO3–+15

代償が適切な範囲かを判定します。

代謝性アシドーシスの呼吸性代償については上記の簡易な計算式があります。

代償が不十分であれば呼吸性アシドーシスの合併、逆に過代償であれば呼吸性アルカローシスの合併を疑います。

それ以外の代償計算については急性・慢性、呼吸性・代謝性、アルカローシス・アシドーシスとそれぞれ計算が違い非常に煩雑なので省略します。

実際の臨床で解釈が問題となるのはほとんど代謝性アシドーシスなので、とりあえずこの簡易式をまず覚えましょう。

アニオンギャップ(AG)を計算する|AG開大性代謝性アシドーシスを見逃さない

アニオンギャップ(AG)の正常値
AG=Naー(Cl+HCO3)=12± 2

アニオンギャップは陽イオンであるNaと陰イオンのCl・HCO3との差です。

AGの正常値については多くの教科書で12±2と記載がありますので、初心者や学生はこれをそのまま採用してください。

ただしある程度経験を積まれたら、これではうまくいかない場合が出てくるので、アニオンギャップの正常値12±2、が正しくない理由、の記事も参考にしてください。

話を戻しますが、AGが正常範囲より大きければ、AG開大性代謝性アシドーシスがあると言えます。

このAG開大性代謝性アシドーシスを発見することが血液ガスを読む最大の目的と言っても過言ではありません。

なぜならばAG開大性代謝性アシドーシスの原因は緊急性の高い病態が多いからです。

AG開大性代謝性アシドーシスの原因はKSMAUL(クスマウル)で覚えます。

  • Ketoasidosis(ケトアシドーシス)
  • Salytilic acid ,Sepsis(サリチル酸、敗血症)
  • Metanol(メタノール)
  • Aspirin, Alcohol(アスピリン アルコール)
  • Uremia (尿毒症)
  • Lactic acidosis(乳酸アシドーシス)
 ポイント
AG開大性代謝性アシドーシスの原因は緊急性が高い病態が多い

補正HCO3を計算する

補正HCO3-の計算
補正HCO3−=HCO3–+ΔAG
ΔAG=AGーAGの正常値

ΔAGとはAGの増加量なので、例えばAGが20であれば20-12=8がΔAGとなります。

補正HCO3−とは、AG増加無かったと仮定した(補正した)場合のHCO3–の値です。

なので本来ならば補正HCO3−は24±2という正常範囲に収まるはずです。

もしも補正HCO3–が高ければ代謝性アルカローシスの合併があるということです。

逆に補正HCO3−が低いということはAG非開大性代謝性アシドーシスの合併があるということになります。

アシドーシス、アルカローシスの原因を考える

ここまでのステップで、酸塩基平衡の異常が何か、何と何が合併しているかの判断ができているはずです。

あとはそれぞれの原因が何かを病歴や身体所見などと合わせて考えていくことになります。

AG開大性代謝性アシドーシスの原因についてはAG計算のところで述べているので、それ以外について解説します。

AG非開性アシドーシスの原因の代表的なもの

  • 下痢(HCO3–の喪失)
  • Clを含む輸液製剤の大量投与

AG非開大性代謝性アシドーシスの原因は基本的にHCO3-が失われるかClが過剰かのどちらかです。

輸液が原因となっていることは意外と多く、生食やアミノレバンなどはClイオンが多く含まれています。

生食の大量輸液はよくありますが、肝性脳症で頻回にアミノレバンを投与されている肝硬変の症例でも時々あります。

代謝性アルカローシスの原因の代表

  • ループ利尿薬
  • 低K血症
  • 肝硬変
  • 嘔吐(胃液の喪失)
  • 循環血漿量の減少

尿中Clが低下(<20)している場合は循環血漿量減少を考えます。

尿中Cl>20の場合はアルドステロン亢進状態を考えることになります。

まとめ

血液ガスの読み方について酸塩基平衡の解釈を解説しました。

5つのステップの流れをマスターしましょう。

緊急性の高い病態はAG開大性代謝性アシドーシスがほとんどなので、まずそれを発見できるようになることが目標です。

それに慣れてきたら他の病態も覚えていけば大丈夫です。

アニオンギャップの正常値12±2、が正しくない理由

2020年2月9日