ミルクアルカリ症候群とは|高カルシウム血症を診たら内服薬を確認しよう

研修医・若手医師

カルシウムが13!!高カルシウム血症だ・・・
高齢者だし悪性腫瘍とかかな?

確かに悪性腫瘍は高カルシウム血症の重要な鑑別だね。
けどこの人はカルシウム製剤とマグネシウム製剤を内服しているしミルクアルカリ症候群かもしれないね!

ミルクアルカリ症候群??

目次

ミルクアルカリ症候群とは

今から100年近く前(20世紀初頭)に胃潰瘍の治療として、牛乳とマグネシウム製剤を飲むという治療がありました。

しかしこの治療を受けた人たちが高カルシウム血症による意識障害を発症することが報告されました。

マグネシウムの過剰によって副甲状腺ホルモンの分泌が低下し、腎臓からの重炭酸イオン(HCO3)の再吸収が促進され代謝性アルカローシスとなります。

その結果、カルシウムの吸収が促進され高カルシウム血症となります。

この病態が発見されたきっかけとなった胃潰瘍の治療方法からミルクアルカリ症候群という名前がついたと言われています。

現在はもちろん胃潰瘍の薬物治療の主体はPPIなどになっていますが、ミルクアルカリ症候群と呼ばれる病態は無くなっていません。

それはいったいなぜなのでしょうか?

なぜ今でもミルクアルカリ症候群が起こるのか

ミルクアルカリ症候群の典型的な検査異常
高カルシウム血症+代謝性アルカローシス+腎障害

カルシウムとマグネシウムの組み合わせが良くないわけですが、特に高齢者でこれらが併用される事は珍しくありません。

骨粗鬆症の治療としてのCa製剤と、便秘の治療薬であるMg製剤が投与されるからです。

骨粗鬆症でカルシウム製剤を処方されていた人が、ある日便秘を訴えてマグネシウム製剤を処方される、という流れは決して珍しいことではないでしょう。

救急外来などで高カルシウム血症を診たら必ず内服薬を確認し、Ca製剤だけでなくMg製剤も併用されていないか確認するようにしましょう。

また、もし自分がかかりつけ医の立場となった時は、カルシウム製剤とマグネシウム製剤の併用は避ける、または止むを得ず併用する場合は定期的にカルシウム値をフォローするように気をつけたいところです。

サイアザイド系利尿薬も副甲状腺ホルモン分泌低下させるため併用されている場合は悪化しやすいです

高カルシウム血症の初期治療

高カルシウム血症の初期治療
  1. 生食輸液
  2. ループ利尿薬投与
  3. カルシトニン、ビスホスホネート

まずは生食輸液で脱水補正と尿中へのカルシウム排泄促進を行います。

脱水の補正という意味ではリンゲル液でも良いのですが、リンゲル液には少ないですがカルシウムが含まれています。

またミルクアルカリ症候群では代謝性アルカローシスが合併しているので、クロールイオン(Cl)が多い生食の方がより適切かと思います。

ループ利尿薬(ラシックスなど)の投与もカルシウムの尿中排泄を促進します。

ただしループ利尿薬は代謝性アルカローシスを助長する場合があります。

ミルクアルカリ症候群の場合は高カルシウム血症の症状が重度でなければ、原因薬剤の中止と生食輸液でまずは様子を見るのが無難かもしれません。

まとめ

ミルクアルカリ症候群について解説しました。

カルシウム製剤とマグネシウム製剤の組み合わせは決して珍しくない組み合わせなので、軽症も含めれば頻度は少なくないはずです。

高カルシウム血症を診たら悪性腫瘍も重要ですが、内服薬をまずチェックしてみましょう。

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