専門医はとったほうがいい?収入は増える?救急科専門医が考えるメリット

研修医・若手医師

「専門医ってとらなきゃいけないの?」

「専門医っていくつくらいとったほうがいいの?」

などの疑問を感じたことはありませんか?

もちろん個人の考えや目指す働き方によって正解は変わりますが、そもそも専門医をとるメリットがわからないと判断できないですよね。

私は救急科専門医、集中治療専門医の2つを取得していますが、一般論から個人的に感じるメリットについてお話しします。

※専門医の領域によっては当てはまらない点があるかもしれませんがご容赦ください。

目次

専門医を持っていると収入面で有利か?

専門医を持っていることで収入が増えるのか(もしくは持っていないことで不利になるか)というのはまず気になるところかと思います。

医師転職サイトなどの特集などを見てみると、専門医を持っていても持っていなくても平均収入はあまり変わらない、とする記載や、専門医があると年収で50-100万程度増える、との記載もあったりします。

増えても年50-100万ならほとんど変わらない(?)、という解釈もできるかもしれませんが・・・

ここをもう少し掘り下げていくと、急性期病院で同じ業務内容ならば専門医を持っているほうが給料が高い可能性がある、と僕は考えます。

まず前提として、診療報酬上で専門医である事で直接評価が高くなる項目は現時点では存在していないはずです(2020年1月時点)

であれば、病院が専門医の資格(スキル)を必要として優先的に採用したいために報酬を追加するという形が考えられますが、その一つとして専門医手当というのがあります。

専門医資格が直接報酬に影響する専門医手当

病院が専門医資格を評価して、専門医手当というものを基本給とは別に設定している場合があり、これは直接専門医資格の有無が報酬に影響することになります。

これは全ての病院が設定しているわけではないので、事前に確認が必要です。

ちなみに私が働いている病院では基本領域とサブスペシャリティ領域一つずつにつきそれぞれ月5万円が専門医手当として給与に上乗せされます。

私は基本領域としての救急科専門医、サブスペシャリティ領域(専門医機構の2階部分に当たる)として集中治療専門医を持っているので月10万円が支給されています。

これだけで1年間で120万円なので、あるとないとではそこそこの差になると思います。

もちろん、慢性期病院で専門医資格を必須としない領域で働いても年収として私より多くの給与を得ている医師はたくさんいると思います。

あくまでも、急性期病院で同じ業務内容であれば専門医資格があるほうが給与が高くなる可能性がある、ということになります。

専門医を持っていることで就職・転職に有利か?

専門医手当の部分でも述べましたが、専門医資格は急性期病院で評価される傾向にあります。

急性期病院では緊急性が高く、専門性が高い疾患を扱う傾向があるので、自然なことです。

なので自分が今後急性期病院で長く働きたい、もしくはポストを得たいと考えているのであれば専門医資格あったほうが良いと思われます。

逆にいずれは慢性期病院で働くつもり、クリニックで働くつもりという方は必ずしも専門医資格にこだわる必要はないかもしれません(自分でクリニックを立ち上げる際に広告として専門医資格を使いたいという場合は別です)。

専門医を複数持つことのメリットは?

専門医を複数持つことのメリットを考える前に、基本領域とサブスペシャリティ領域について整理しておく必要があります。

専門医機構によって19の基本領域の専門医が設定され、その各専門医を取得した後にサブスペシャリティ領域として(いわゆる2階建て部分)設定されている専門医があります。

基本領域一つ、サブスペシャリティ領域一つまたは二つ程度の専門医を取得すること、そして維持することはそこまで難しくありません。

サブスペシャリティ領域の取得や維持は基本領域の専門医の取得・維持の中で得てきた知識・症例・研修施設などが重なる部分があるため、労力としては少なく済みます。

例えば私は救急科専門医を取得した後にそのまま同じ施設で集中治療専門医も取得しましたが、集中治療専門医を取る前から関連学会として集中治療医学会への参加・発表や集中治療関連の論文作成を救急医として自然に経験できていました。

なので専門医取得の要件を満たすのにそれほど労力を要しませんでした。

しかし、救急科専門医を取得後に内科専門医や外科専門医のような基本領域の専門医を取ろうとすると、簡単ではありません。

まず専門医プログラムに登録して、救急科としての業務を基本的には離れた状態で数年単位で研修をこなすことになります。

また、基本領域の専門医の維持も大変です

専門医機構による専門医更新の要件は、(少なくとも救急科専門医に関しては)以前と比べると格段にきびしくなっており。これは今後も続くと思われます。

学会参加だけでなく、経験症例の実績や講習会への参加など基本領域一つの維持だけでもやっとというのが実際のところだと思います。

では基本領域の専門医を複数持つことのメリットは?というと、個人的にはあまりないと思います。

救急科専門医を持ちつつ外科専門医や内科専門医を維持されている先生は少なくないですし、もちろん自分の得意分野を他の人にわかりやすくするというメリットはあります。

救急科専門医だけれど日常的に手術をする業務が多いので外科専門医があるほうが周囲にも理解されやすい、という状況もあるかと思いますが、メインの業務が外科手術なのであれば外科専門医だけを維持するでも良いのでは、と個人的には思います。

少なくとも取得・維持にかかるコストを上回るメリットは無いと言っていいと思います。

専門医をとる最も大きなメリットとは?

専門医を取ることの最も大きなメリットは、専門医を取る過程で得られる経験です。

専門医を取るために必要な症例であったり、研究活動はもちろん専門医プログラムに入らなくても経験できなくはないです。

しかし、専門医を取るために必要な症例経験、手術手技などが一定の水準で設定されているおかげで、指導医もそれを必ず経験させるために配慮をします。

例えば麻酔科専門医は心臓麻酔の必要経験数が設定されていますが、心臓血管外科が無い施設では、その経験をさせるために院外研修を組みます。

「専門医までは取るつもりは無いけど標榜医までは取りたい」

と研修している人には心臓血管外科の手術を経験させよう、とはなりにくいと思います。

専門医を取る、という目的を持って研修している場合は自他共に設定されたハードルが共有できているので効率の良い研修ができる可能性が高いです。

まとめ

専門医を取ることのメリットについてお話ししましたが、僕の個人的な結論としては

  • 基本領域の専門医1つは取っておいたほうが無難!専門医を取る過程で効率の良い研修ができる。
  • 急性期病院で働き続けるならばサブスペシャリティ領域も持っておくと良いかも(収入面や転職時に優遇される可能性あり)
  • 基本領域を2つ以上は今後は維持が難しいかもしれない!

です。

あくまでも個人の働き方や何を優先するかの価値観が大きい部分ではありますが、参考になれば幸いです。