救急外来での破傷風トキソイドの適応の考え方【初心者向けに解説】

研修医・若手医師

救急外来で傷の処置をした後に、

破傷風の予防ってどうしたらいいんだろう・・・

と悩んだ事はありませんか?

そんなに汚い傷では無さそうだけど、予防はいるのかな・・・

結構汚い傷だけでトキソイドだけでいいんだろうか・・・

そんなことを悩んだことがある方に読んでほしい記事です。

創傷処置時の破傷風トキソイド・グロブリンの適応

シンプルに結論を言ってしまうと

  • トキソイドはどんな傷でも必要(ただし接種歴次第で不要)
  • グロブリンはリスク高いかつ接種歴3回未満または不明の時のみ必要

という理解で大きな問題は無いかと思います。

ちなみに日本で破傷風トキソイドの定期接種が始まったのは1967年です。

なのでそれ以前に生まれた人は基本的に3回接種がされていないとして対応する必要があります。

破傷風のリスクが高い創とは

破傷風のリスクが高い創ってどんなの?という当然の疑問が出るかと思います。

American College of Surgeons(ACS)が示している基準を紹介します。

ただし、このうち何項目を満たしたらどのくらいの発症率があがる、といった明確なデータがあるわけではありません。

なので3回未満または接種歴不明の人がこの項目の1つを満たしからといって絶対にグロブリンを投与したほうがいい、ということが言えるわけでは無い、とうことに注意してください。

あくまでも目安でしかないのです。

破傷風予防に関する科学的根拠が乏しい理由

破傷風予防の考え方の表は科学的なデータに基づいているわけではありません。

もう少し正確に言えば、破傷風の適切な予防方法を検討したRCTは実現性に乏しい、という事です。

例えば、リスクの高い創に対して破傷風トキソイド単独で良いか、テタノブリンまで投与した方が良いのか、という比較をするRCTは残念ながら実現できません。

なぜならば、破傷風の発生頻度が極端に低いからです。

日本での破傷風の発生数は年間約100例程度と言われています。

日本全体を調べたとしても100例しか発症しないのであれば、数千人集めたとしても数例発症するかどうかでしょう。

たった数例で差を比較するのが難しいという事は簡単に予想できます。

このあたりの理屈がちょっと苦手という人は、サンプルサイズとは?医学論文を読むための統計知識を数式無しで解説、の記事を参考にしてください。

ちなみに破傷風予防に関して全くデータが無いかというと、そうでもありません。

第2次世界大戦で破傷風予防(トキソイド投与)を行った国と、そうでない国(日本など)で明らかに破傷風の発生頻度が違った、というデータがあります。

なので少なくともトキソイドによる予防を行うことのメリットはあるという事は言えそうですが、戦争中の衛生状態や傷と、救急外来での処置後の傷に当てはめられるか、というと悩ましいところです。

まとめ

破傷風の予防に関して、トキソイド、グロブリン投与の考え方について解説しました。

救急外来における適切な破傷風予防に関するRCTが無いので、本当のところは不明です。

ですが破傷風の発生頻度は極めて低いものの、発症してしまうと治療に難渋する疾患ですので、適切な予防を行う必要があります。

初期研修医の先生にまず読んでほしい10記事

2020年4月16日

ER診療に役立つ知識・スキルのための10記事

2020年3月23日