「ふらつき」という主訴で救急外来を受診する患者さんは少なくありません。
「ふらつき」と聞いてすぐに鑑別は挙がるでしょうか?
脳梗塞?
脳梗塞もあるかもしれないですが、他にも色々ありそうですよね。
ここでは「ふらつき」というやや漠然とした主訴を患者さんが訴えた時にどう考えていくかを解説していきます。
ポイントは「適切な言葉に置き換える」です。
目次
“ふらつき”を適切な言葉に置き換えてから鑑別診断を考える
“ふらつき”という主訴は、そのままだと鑑別診断を考えるのに向きません。
ふらつく原因は「めまい」のこともあれば、「前失神」の場合もありますし、時に「倦怠感」が原因のこともあります。
- めまい
- 前失神
- 倦怠感
- 筋力低下
※他にもあるかと思いますが、あくまでも例です
ここに挙げたような「めまい」とか「前失神」などに置き換えることができれば、
前失神:心原性 or 起立性 or 迷走神経反射
などのように、いつもの感じで鑑別を進めていくことができます。
この最初の作業が本当にとても重要になります。
迷路で入り口を間違うと、いくら時間をかけても正しいゴールにたどり着けない、という例えで研修医の先生には伝えています
ここを間違うといくら検査を進めても、適切な方針を立てられずに路頭に迷うことになるからです。
ただしここで注意すべき点があります。
それは「無理やり置き換えることにこだわりすぎない」ということです。
適切に置き換えることができない場合や、置き換えるべき用語に迷う時にどうすべきかをさらに解説していきます。
“ふらつき”を置き換えることができない時の対処方法
ふらつきのような主訴を適切な用語に置き換えていくことが重要であると説明しました。
しかし無理やり置き換えることにはリスクが伴います。
患者さんはそうは言っていないのに、「めまい」だと決めつけてしまうと、鑑別を絞りすぎてしまう危険性があるからです。
また、カルテに「めまい」と断定して記載しまうことで後から診察する人がその記載に引っ張られて鑑別診断を広げることができにくくなってしまいます。
ふらつきの解釈に悩む場合は、プロブレムリストに「#ふらつき」を挙げて、その解釈のアセスメント(「今回はめまいと解釈して鑑別をすすめた」など)を記載をすると良いでしょう。
また、少なくとも「倦怠感」では無さそうだけど「めまい」か「前失神」かは区別が難しい、という場合もありえます。
この場合は2つの症状を平行してアセスメントしていくという方法で、鑑別診断を最初は広くとるという方法が現実的です。
“気分不良”も同じように考える
主訴「気分不良」も「ふらつき」と同じように考えます。
「気分不良」のままでは鑑別が挙がらないため、「嘔気」や「倦怠感」、「めまい」や「胸部不快感」などの可能性を考えて問診していきます。
余談ですが、救急隊や看護師さんに「気分不良とは具体的にどういうことだ!」とか「気分不良は医学的な言葉じゃない!」とか詰めてる医師をまれに見かけます。
個人的には救急隊や看護師さんの解釈が入っていない、患者さんの言葉としての「気分不良」をそのまま伝えてもらった方が良いと思います。
「気分不良」が何かを考えることも含めて医師の仕事(スキルが必要なこと)ではないかと思うので。
まとめ
「ふらつき」という主訴の時にどう考えていくかについて解説しました。
ポイントは2つ
- 適切な言葉に置き換える
- 無理やり置き換えることをしない
です。
一見矛盾していますが、このバランスをうまくとりながら鑑別を進めていくのが臨床医の腕の見せ所です。