救急外来で鑑別疾患をあげるときは、致死的な疾患と頻度が高い疾患をそれぞれ最低3つずつ考えるように、と言われたりすると思います。
胸痛に関しては3つだと足りないです。
5killer chest painと呼ばれる5つの致死的な疾患を常に頭にいれて診療をすすめることが重要になります。
5killer chest painとは何か?
そして5killer chest painを救急外来で考える上でのポイントについても解説していきます
目次
胸痛の鑑別、5killer chest painとは
- 心筋梗塞(ACS)
- 大動脈解離
- 肺塞栓
- 緊張性気胸
- 食道破裂
この5つが見逃すと致死的となる5killer chest painです。
まずは鑑別を挙げれるようになることが重要ですが、それだけだと実際には不十分なのでもう少し詳しく解説していきます。
頻度が高いのは心筋梗塞、大動脈解離、肺塞栓
5killer chest painと言われていますが、実際は圧倒的に最初の3つ(ACS、大動脈解離、肺塞栓)の頻度が高く、かつ見逃しやすいです。
頻度が高い3つ+比較的まれな2つ、というイメージです。
緊張性気胸や食道破裂であればバイタルサインが崩れていることがほぼ確実ですが、ACSや大動脈解離、肺塞栓も来院時は一見症状が落ち着いて見えることもあります。
なので緊張性気胸や食道破裂が帰宅することは考えにくいですが、ACS、大動脈解離、肺塞栓は鑑別疾患に挙げて、慎重に除外していかないと見逃してしまいます。
特にこの中でも大動脈解離は非典型的な症状で来院することが多く、病歴や身体所見のみで除外することは困難です。
大動脈解離の診断については、大動脈解離を見逃さないためのDダイマーの使い方、の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
緊張性気胸ではない小さな気胸も忘れない
胸痛+ショックであれば緊張性気胸は重要な鑑別です。
ですがショックではない、まだ緊張性気胸でない場合に意外と見落とされがちです。
胸痛で来院したものの血圧はむしろ高め、心不全の既往もありNIVを装着されたが実は気胸があった。
救急外来で胸部レントゲンを撮ったが気胸が見逃されていて、NIVによる陽圧換気で気胸がかなり悪化してから診断がつく、ということもあります。
5killer chest pain最後の難関:食道破裂
食道破裂は5killer chest painの中でも頻度が低いため初期研修医の先生で一度も診たことがない、という人は少なくないはずです。
典型的な病歴は嘔吐後の激しい胸痛です。
50代の男性が嘔吐後に激しい胸痛を訴えて、前医にに救急搬送。
造影CTでも原因はわからず、ショックバイタルになったため転送されてきた患者さんがいます。
ですが、嘔吐後の激しい胸痛、CTで大動脈解離や肺塞栓はないが右胸水がある、ショック、というキーワードから食道破裂の可能性を考えることができれば診断できます。
実際に前医で撮られたCTを確認すると縦隔気腫があり、食道破裂の可能性が高いと判断し外科コンサルト、緊急手術となりました。
食道破裂は対応が遅れるとあっという間に状態が悪化することもあるので必ず鑑別に入れておきましょう。
まとめ
救急外来での胸痛の鑑別、5killer chest painについて解説しました。
まず鑑別をあげることが重要ですが、頻度やそれぞれの疾患の特徴などを整理していくことも重要です。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。