初期研修病院を選ぶのって悩みますよね。
とりあえず有名病院を受けたらいいのかな?
でも有名病院なんて自分はマッチしないかもしれないし・・
けどちゃんとした研修は受けたいな。
僕も学生の時に悩んでいろいろな病院に見学に行きました。
けど、ちゃんとした研修ってなんだろ?という疑問が解決しないままなんとなくいわゆる有名病院のマッチング試験を受けていました。
僕はいわゆる有名病院での初期研修を終えて、そこで初期研修医の教育に関わり、そして他の施設で研修した医師の話などを聞いてきました。
そして初期研修病院を選ぶ時には、初期研修で身につけるべきスキルがしっかり学べるかに注目する必要があるという結論に達しました。
初期研修病院を選ぶ時のポイントについて、特に見学時に見るべきことについてお話ししていきます。
目次
初期研修で身につけるべきスキルと病院見学時にチェックすべき4つのポイント
初期研修の3年間で学ぶべき医師としての素養で特に重要なものが4つあります。
- EBMの5ステップを理解する
- 臨床推論の基礎を学ぶ
- 感染症診療の基礎を学ぶ
- 救急外来の初期対応能力を身につける
これらは全て初期研修医の間にしか身につけることができません。
ではそれぞれのスキルを身につけられるかどうか、見学時にどこに注目すれば良いかを解説していきます。
EBMの5ステップに準じたjournal Clubを行なっているか
EBMの5ステップを簡単に説明すると、臨床的疑問を解決するために論文を検索して、正しく読み解き、目の前の症例に適応するためのスキルです。
医学的の科学データは日々更新され続けており、そのペースは今後もどんどん加速していきます。
どの専門医になるとしてもこのスキルは欠かせません。
見学時にどこに注目するか。それは、
jounal club(抄読会)がEBMの5ステップに準じて実施されているかをチェックすることです。
見学時にjounal clubに参加できる可能性は高くないかもしれません。
その場合は研修医に「jounal clubってどんな感じですか?」と聞いてみましょう。
「適応に好きな論文探して日本語訳するだけだよ」という返事が返ってきたら、アウトです。
「結構作業量多くて大変なんだよね・・・でも論文の読み方はしっかり指導してもらえるよ」という感じの返事であれば大丈夫な可能性が高いです。
できればjounal clubのスライドを見せてもらうとより確実です。
そもそもEBMの5ステップが何かが全然わからない、という人も大丈夫です。
別記事でEBMの5ステップについて解説しているのでそちらを参考にしてください。
臨床推論について研修医が指導を受けているか
臨床推論とは、病歴・身体所見から検査・治療をどう考えていくかという臨床の基本です。
ですが、この基本がなかなか教育されないという現実があります。
これが研修病院でされているかを1日の見学で判断するのは難しいのですが、高い確率で判断する方法として、研修医の診療科のローテート表を見ることです。
「総合内科」がある、そして初期研修医が2-3ヶ月「総合内科」をローテートしている場合はおそらく大丈夫です。
「総合内科がある」だけでは不十分です。
総合内科はあるけど医師は1人だけで入院は担当していない、という病院も少なくありません。
その場合は研修医が総合内科を何ヶ月もローテートするということはまずないでしょう。
逆に総合内科に数人の医師がいて、入院症例も豊富で臨床推論について日々指導が受けれる。
そんな病院であれば必ず研修医が総合内科を2-3ヶ月ローテートするはずです。
臨床推論てそもそもどんなスキルなの?という疑問については別記事で臨床推論の基本について解説しているので、そちらを参考にしてください。
感染症診療の指導が受けられか
感染症診療も初期研修医のうちしか身につけられないスキルのうちの一つです。
感染症は臓器別専門医にとっては言い方は悪いですが「おまけの仕事」になります。
悪性腫瘍や血管内治療を扱う診療科の医師からすれば、メインの疾患とはなり得ないですし、合併症の一つにすぎません。
ですがどの診療科に進んでも関わらざるを得ないのも感染症です。
どんな疾患で入院したとしても肺炎や尿路感染症、血流感染症などはある一定の割合で発症するのです。
それに対応できずに総合内科に丸投げや時には研修医におまかせ、ではちょっと寂しいですよね。
なので初期研修医のうちに正しい教育を受けておくことが重要です。
ではどんな初期研修病院ならば感染症の教育を受けられるのか?見学の時のポイントをお話します。
それは研修医が自分でグラム染色をしているか?です。
感染症診療の三角形という考え方が基本になります。
この感染症の三角形は、自分でグラム染色をして抗菌薬選択を考えるという作業と密接に関係しています。
なのでシンプルに「研修医の先生がグラム染色することありますか?」と質問すれば大丈夫です。
救急外来の初期対応能力が身につくか
救急外来での初期対応能力が身につくかは重要です。
重要というか死活問題と言っても良いかもしれません。
なぜなら後期研修医になったら基本1人で当直をすることになるからです。
上級医が指導してくれてフォローもしてくれる初期研修医のうちに独り立ちの準備をする必要があるのです。
ここを見極めるポイントは簡単です。
それはER型救急を行なっているかどうかです。
ER型の定義は実は難しいのですが、基本は重症度や疾患によって断ったりしない救急です。
なのであらゆる症状・病態に対応するスキルが身につきます。
ただし、このER型救急は日本ではまだ一般的なっている、とまでは言えない状況なので、研修病院を選ぶ際にはここを条件とすると選択肢がいわゆる人気病院に限られてしまう可能性はあります。
あくまでも初期研修病院の選び方の一つの軸と捉えてください。
有名病院・人気病院で研修するメリット
いわゆる有名病院・人気病院で初期研修するメリットは3つです。
- 教育システムが確立されている
- 同期が優秀
- 後期研修でもそのまま残れる可能性高い
教育システムについてはこれまで紹介した4つのポイントがほぼ網羅されている可能性が高いです。
なのである程度研修の質が保たれているということは言えそうです。
また同期が優秀であることも重要です。
優秀な同期から刺激を受けることで勉強のモチベーションが上がったり、同期の学んだ知識を共有してもらえたりとメリットは大きいです。
そして後期研修で残れる可能性が高いこともメリットの一つです。
有名病院・人気病院は関連医局があったとしても医局に頼らずとも人が集められるので後期研修医は独自に公募している可能性が高いです。
そして初期研修医として2年間働いた人であればその人となりもわかっているので、面接での評価は安定しやすいです。
もちろん筆記試験の点数に下駄を履かせるということは無いでしょうが、全く知らない他の施設で研修した人よりも自施設で研修した人の方が面接でよく見える(優秀なはずだと思いたい)という心情はあるはずです。
給料が極端に高い研修病院は注意
給料も病院を選ぶ重要なポイントになると思います。
お金は重要ですし、働く対価として適正な給与を受け取ることは当たり前です。
ただし給料が他の病院と比べて極端に高い場合は注意が必要です。
なぜなら相場より給料が高いということは“それなりの理由”があるからです。
例えばめちゃくちゃ忙しい、極端に田舎にある、指導医が少ないなどです。
要は給料を高くしないと研修医が集まらない理由があるということです。
給料が高い病院を選ぶ場合は、なぜ給料が高いのかを考えてその理由も含めて納得できるか、を考えて選ぶ必要があります。
病院見学時に見るべき5つ目のポイント【最重要】
見学時に見るべき4つのポイントに加えて実は最も重要な5つ目のポイントがあります。
それはその初期研修病院で働く研修医の表情です。
忙しい、暇であるとかに関係なく、良い研修ができる病院の研修医の表情は明るくて活気があります。
研修医が楽しいそうに働いている病院なら、あなたも楽しく働ける可能性は高いはずです。
2年間楽しく働けること、これが一番大切です。
まとめ
初期研修病院の選び方として、主に見学時にチェックすべきポイントについてお話ししました。
病院を選ぶポイント、軸は個人によって違うというのはいうまでもありません。
ですが、“初期研修中でしか身につけることができないスキル”という軸から、適切な研修病院を選ぶということは重要だと思っています。
そして最も重要なことは2年間楽しく働けるということです。
参考になれば幸いです。