嘔吐の鑑別の考え方|救急外来でおすすめの2つのアプローチ

研修医・若手医師
84才女性 主訴:嘔吐
認知症で施設入所中
来院の1時間前から突然嘔吐を繰り返すようになったため救急要請。
認知症のため本人は症状を訴えないが、しんどそうにうなっている。

嘔吐以外の症状がわからないし、とりあえず腹部CTはとってみようかな・・・

待って!嘔吐の原因はお腹とは限らないよ。
見落としが無いように嘔吐の鑑別を考えてみよう。

目次

嘔吐の鑑別の2つの考え方

嘔吐の鑑別は非常に多く、また原因となる臓器も多岐にわたるため、鑑別が抜けやすい症候です。

基本は随伴症状とともに考えるのが鉄則です。

例えば頭痛+嘔吐なら頭蓋内疾患、腹痛+嘔吐なら腹腔内臓器、こんな感じであれば難しく無いですよね。

問題は嘔吐以外に症状がない時です。

ここでは2つの考え方を紹介します。

  1. 頭→胸→腹:臓器系統別アプローチ
  2. NAUSEAの語呂合わせ

嘔吐の鑑別の考え方①頭→胸→腹:臓器系統別アプローチ

嘔吐の鑑別は全身の臓器にわたるので、頭から胸、腹と下へおりていくイメージで考えます。

嘔吐の鑑別:臓器系統別
  • 頭:頭蓋内疾患 
  • 眼/耳:緑内障・末梢性めまい
  • 胸:心筋梗塞
  • 腹:消化管疾患
  • 骨盤:尿路・生殖器系
  • 全身:敗血症・内分泌・電解質

嘔吐の鑑別の考え方②NAUSEAの語呂合わせ

嘔気は英語でnauseaですが、その頭文字から覚える方法です。

嘔吐の鑑別:NAUSEA
  • N:Neuro(頭蓋内疾患)
  • A:ACS(心筋梗塞)
  • U:Ureter(尿管結石)
  • S:Sepsis(敗血症)
  • E:Endocrine(副腎不全、電解質)
  • A:Abdominal(消化管疾患)
似ている覚え方として、「NAVSEA」もありますが、なぜかACSが抜けている(2つのAはAbdominalとAddiction)のでイマイチです。

まとめ

嘔吐の鑑別の考え方について2つのアプローチを紹介しました。

重要なことは、頭蓋内疾患、心筋梗塞、敗血症など致死的な疾患を忘れないことです。

もちろん毎回全ての疾患を除外するために「検査づけ」にする必要はありません。

嘔吐の鑑別を漏らさず挙げて、病歴や身体所見と合わせて必要な検査を組み立てていくことが重要です。

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