大腿骨頸部骨折を見逃さないための3つのコツ

研修医・若手医師

大腿骨頸部骨折なんて「レントゲン撮って整形外科コンサルトするだけだし、見逃すとかあるの?」と思った研修医の先生はぜひ最後まで読んでください

大腿骨頸部骨折は救急外来でよく診る外傷の代表ですが、実は診断が難しいことがあるやっかいな外傷なんです

大腿骨頸部骨折を見逃すのは次の3パターン

  1. 「膝が痛い」という主訴で膝関節しか診察しない
  2. 股関節CTが正常という理由で除外できたと判断してしまう
  3. 主訴「発熱」で来院した際に、転倒のエピソードを軽視してしまう

1.「膝が痛い」という主訴で膝関節しか診察しない

転倒して「膝が痛い」と訴えて来院されたら膝のレントゲンを撮って大丈夫だったから帰宅させた。そして翌日、痛みが悪化したため別の病院を受診したところ大腿骨頸部骨折の診断がついた。

実はこれ時々経験するパターンです

膝が痛いのに股関節の骨折なんてあるの?という当然の疑問が湧くと思いますが、実は股関節の骨折で膝の痛みだけを訴えるというのは昔から報告されているんです。
Guss DA.Ann Emerg Med. 1997 Mar;29(3):418-20.
Hip fracture presenting as isolated knee pain.

なので救急外来で膝が痛いという症状を診たら必ず股関節も診察するようにしましょう。股関節を動かして痛がるのであれば膝だけでなく股関節のX線もオーダーしましょう!

2.股関節CTが正常という理由で除外できたと判断してしまう

レントゲンで問題無いように見えてもCTで骨折が見つかることは良く経験するかと思います。

なのでCTで問題無い=骨折は無いと思いがちです

ですがCTで骨折がわからなくてもMRIを撮ることで骨折が発見できる事があるんです

骨折診療の基本として、

診察で骨折を疑う痛みがあればレントゲンが正常でも骨折の可能性を考える

がとても重要ですが、大腿骨頸部骨折も例外ではありません

むしろレントゲンやCTでわからないような安定型の骨折の時点で発見すれば、より侵襲の少ない手術で済む可能性があるのです

診察で股関節を痛がるのであればCTが問題無くてもMRIを施行しましょう

3.主訴「発熱」で来院した際に、転倒のエピソードを軽視してしまう

高齢者で多いパターンですが、主訴「発熱」で来院した場合は当然、「感染源はどこだ?」という思考になります。

そして肺炎が見つかったり、尿路感染症だったり、熱源が見つかればそれで「診断がついて良かった」と安心しますが、ここに落とし穴が隠れている事があります。

高齢者が発熱すると、普段よりも転倒しやすくなることは想像がつくと思います。

しんどくてふらついて転倒したり、夜中にせん妄のような状態になってベッドから転落したりします。

転倒や転落を家族が目撃していれば、主訴「転倒」となって外傷診療のアプローチになりますし、病院によっては最初から外科当直医が診察するので、外傷診療の視点になるため骨折の診断は難しくないかもしれません。

ただし、主訴「発熱」で受診される患者さんの多くは転倒を目撃されていません。家族が動けなくなっている本人を発見して、体が熱いことに気づいて熱があれば、「熱でしんどくて動けなくなっている」、という解釈がついて救急搬送されます。

そのまま転倒エピソードに気づかない場合もありますし、家族が「転んだかもしれない」という病歴をさらっと話したとしても、熱源検索に夢中になってしまうと外傷の検索が必要だという視点が抜けてしまう事があります。

そして、高齢者が転倒した際に見逃してはならない骨折の代表が大腿骨頸部骨折です

※腰椎圧迫骨折などもありえますが、頸部骨折のように早期手術が必要となる可能性は低いので入院後に気づいても許されます

高齢者が発熱を主訴に搬送された時は、転倒した可能性を頭の片隅に常においておき、

「床に倒れていた」、「ベッドの横で倒れていた」などの病歴であれば、外傷の検索も合わせて必要だという認識が必要です。

まとめ:大腿骨頸部骨折を見逃さないための3つのコツ

  1. 「膝が痛い」という主訴でも股関節の診察は必須
  2. 股関節CTが正常でも股関節を痛がるのであればMRIを
  3. 主訴「発熱」で来院した際に、転倒の可能性があれば外傷の検索を熱源検索と並行して行う

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2020年1月9日