腹痛の患者さんを救急外来で診療していて、痛み止めでソセゴンを使ったところ、外科医に「腹痛に鎮痛剤は使うな!痛みの所見が消えるだろ!」
なんて言われた経験は無いでしょうか?(僕はあります)
痛みで苦しんでいる患者さんの痛みは取ってあげたいけど、診断の遅れにつながるなら、結果的に良く無いことをしているのかな・・・
こんな疑問を感じたことがある方にぜひこの記事を読んでもらいたいです(読むのに2分もかかりません)。
目次
腹痛への鎮痛剤の使用と診断の遅れについての研究
腹痛に対する鎮痛剤投与が診断の遅れに影響するか、という臨床的疑問に対するCochrane systematic reviewです。
8つのRCTで922人の検討です。
いずれも成人の腹痛症で診断がつく前にオピオイド or プラセボを投与した研究です。
鎮痛剤の投与は不適切な治療方針(手術の遅れなど)にはつながらなかった、という結論です。
そして当たり前ですが、鎮痛剤投与群は患者さんの苦痛が有意に改善しています。
腹痛に対して適切に鎮痛剤を投与する事は、科学的に妥当だと言えます。
腹痛診療のバイブル|COPEの急性腹症の早期診断
COPEというのは人の名前です。
COPE先生が書いた「急性腹症の早期診断」という本は、腹痛診療のバイブルです。
この本の中でも鎮痛剤の投与について、
「今後鎮痛剤の投与が明らかに悪であるという研究結果が出ない限りは、鎮痛剤を使用すべきである」という趣旨の一文があります。
科学的なデータ、そして経験ある医師のいずれも腹痛に対する鎮痛剤投与を推奨しているということです。
腹痛で苦しんでいる患者さんには自信を持って鎮痛剤を投与してあげましょう。
日本語訳版で英語が苦手な人でも安心して読めます。
腹痛診療はエビデンスだけでは解決しない問題も多くあり、経験が無視できない領域です。
その腹痛診療のすすめ方を豊富な経験に基づいて解説した本です。
腹痛診療にいま一つ自信が無い、または将来消化器内科や外科に進もうと考えている人は必読の1冊です。
まとめ
腹痛に鎮痛剤を投与する事は診断の遅れにはつながりません。
研究結果も、経験ある医師も鎮痛剤投与を推奨しています。
腹痛に限らずですが、苦しんでいる患者さんの痛みには積極的に鎮痛薬を投与しましょう。