若い女性の腹痛の診断って苦手な人多いんじゃ無いでしょうか。
卵巣捻転とか緊急性が高い場合もあるかもしれないけど、どんなん時に疑ったらいいんだろう・・・
なんて思っている方に読んでいただきたい記事です。
後半の卵巣捻転に関してはup to dateの”ovarian torsion”の項目を元に解説しています。
目次
妊娠可能年齢の女性の腹痛は妊娠を否定する
妊娠可能年齢の女性の腹痛では妊娠の除外は必須です。
妊娠の除外とは、問診ではなく尿HCGの検査を行うことです。
少なくとも「妊娠の可能性はありますか?」「無いです」では妊娠を否定したことにはなりません。
「たぶん無いです」はもはや「ある」と言っているようなものです。
性交渉そのものが無いか、月経歴にも矛盾が無いか、などの情報を追加することで精度を高めることはできますが100%の否定は難しいです。
本人が妊娠の可能性に気づいていない場合だけでなく、(事情があって)本当のことを言っていない可能性もあるからです。
ローレンスティアニー先生も「話を聞くよりも尿検査をしなさい」と言っています。
妊娠可能年齢の女性の腹痛診療では尿中HCG検査は必須になります。
婦人科疾患以外の腹痛の鑑別
女性の下腹部痛と言っても、もちろん婦人科疾患とは限りません。
- 虫垂炎
- 憩室炎
- 尿路結石
など、一般的な鑑別疾患も挙げて問診、診察をしていきましょう。
ものすごく痛がっていると思ったら尿路結石だった、という事も少なくありません。
婦人科的腹痛の鑑別
妊娠が否定できていれば、婦人科疾患で考えるべきは卵巣捻転・卵巣出血、PIDくらいです。
もちろん月経に関連した痛みが頻度としては多いですが、それはあくまでも他が除外された時に診断できます。
確定診断のためには産婦人科医の診察(内診・経腟エコーなど)が必要になりますが、それぞれの疾患の特徴を理解して、特にどの疾患を疑っているのかということを明確にした上でコンサルトするべきです。
ここでは特に緊急性がある卵巣捻転について解説します。
卵巣捻転
知られているリスクとして、卵巣嚢腫などによる卵巣の腫大があります。
一般に卵巣のサイズが5cm以上になると卵巣捻転のリスクとなります。
ただし5cm以下では捻転しない、というわけではありません。
あるケースシリーズによれば捻転した卵巣のサイズは1cmから30cmまでと幅広く、サイズによらず捻転する可能性はあると言わざるをえません。
ただし知っておくべき重要な知識として、正常サイズの卵巣が捻転しやすいのは15歳未満の小児です。
15歳未満のケースシリーズにおいて、50%以上が正常サイズの卵巣だったという報告があります。
実際の診療では、CTなどで卵巣が腫大していれば(特に5cm以上)を卵巣捻転を考慮する。そして15歳未満であれば卵巣が腫大していなくても卵巣捻転を考慮して婦人科診察を依頼する、ということになります。
まとめ
女性の腹痛について卵巣捻転を中心に解説しました。
最も大切なのはまず妊娠(子宮外妊娠)を除外することです。
卵巣捻転については、サイズが重要であるものの、15歳未満は正常サイズでも捻転のリスクが高いことに注意が必要です。