急性薬物中毒というと胃洗浄っていうイメージだけど、本当にした方がいいの?
活性炭て、飲むの(飲ませるの)大変そうだけど毎回投与した方がいいのかな?
そんな疑問を解決するための記事です。
目次
急性薬物中毒に胃洗浄はするべきか
いきなり結論です。
「致命的な量の薬物を内服し、かつ摂取から1時間以内でなければ考慮すべきではない」
かつては経口摂取した薬物中毒といえば胃洗浄という時代がありました。
1997年にAmerican Academy of Clinical Toxicology(AACT)などが発表した指針で、胃洗浄の適応は限定されるべきとされています。
根拠としては
- 胃洗浄の有効性は示されていない
- 胃洗浄のリスクは結構大きい
- 「いかなる場合も胃洗浄は施行すべきではない」という専門家もいる
などです。
もしも胃洗浄をするとしても、挿管して気道確保を行う、30Fr以上の太いチューブで行う、など正しいやり方である必要があります。
挿管せずに普通の16Fr程度の胃管でやる胃洗浄はダメということです。
胃洗浄のためだけに挿管するというのはハードルが高いですよね。
なので致死的な薬物を致死的な量飲んでしまってかつ1時間以内であれば考慮する、ということですが、その状況自体がそこまで多くないのが実際のところです。
急性薬物中毒の活性炭は有効か
これも最初に結論ですが、
「活性炭投与が臨床的転帰を改善する」という大規模な臨床対照研究はない」
です。
いちおう活性炭の吸着効果は動物実験とボランティアによる研究などで証明されているようです。
理論的には、分子量100~1,000程度の非イオン型の塩や疎水性の化合物がよく吸着されます。
投与のタイミングは薬物服用から1時間以内が有効とされています。
活性炭の繰り返し投与とは
Multiple-dose activated charcoal (MDAC) としてup to dateなどにも記載があります。
すでに吸収された薬物でも、種類によっては腸粘膜血管内から腸管の管腔内へ濃度勾配により拡散分泌します。
つまり経口投与した活性炭が腸管内の薬毒物濃度を下げると血中濃度も低下します。
活性炭を繰り返し投与すると・・・
- 腸管内に分泌される薬物の吸着(腸管透析の作用増強、腸肝循環の遮断)
- 消化管内で活性炭から遊離した薬毒物の再吸着などの作用により薬毒物の吸収を減少
という効果が期待されます。
- テオフィリン
- 三環系抗うつ薬
- フェノバルビタール
- フェノチアジン系薬
- カルシウム拮抗薬
など
実際の投与方法は活性炭を25-50gを4時間おきに投与します。
効果については研究によって異なるため、やらないよりはやったほうがいいかもしれない、という程度でしょうか。
まとめ
急性薬物中毒における胃洗浄と活性炭投与の有効性について解説しました。
胃洗浄も活性炭も有効性を示す質の高い研究がある治療ではありません。
担当する医師や施設によって考え方が異なるかもしれませんが、少なくともルーチンで行うような治療ではない、という認識で間違いないでしょう。