セロトニン症候群とは|診断や治療の基本を解説

研修医・若手医師

また薬物過量内服か、最近多いな・・・
でも基本ほっとくしかないし、目がさめたら精神科診してもらうくらいですかね。

待った!この人はうつ病でSSRIも飲んでるね。腱反射が亢進していて、振戦も出てるしセロトニン症候群を疑った方が良さそうだよ。

セロトニン症候群??

目次

セロトニン症候群を起こす薬剤

セロトニン症候群の誘因となる代表的薬剤
  • SSRI
  • SNRI
  • 三環系抗うつ薬
  • オピオイド(トラマドールなど)
 さらに詳しく原因薬剤を知りたい方は、セロトニン症候群を引き起こす可能性のある薬物(外部サイト)、のページを参照してください。

典型的には薬剤の新規投与、増量、過量摂取などが誘因となります。

ただし血中濃度とセロトニン症候群の症状は相関しないとも言われれており、常用量でも発症しうる点には注意が必要です。

セロトニン症候群の診断:Hunter criteria

Boyer EW, Shannon M. N Engl J Med 2005;352:1112-1120.

NEJMに掲載されたセロトニン症候群の典型的な症状を表したイラストです。

散瞳、発汗、頻脈、興奮、振戦など交感神経亢進を示唆する症状が出ます。

最もよく使われる診断基準がHunter criteriaです。

Hunter Criteria
セロトニン作動薬の内服に加え下記の1つ以上

  • 自発的なミオクローヌス
  • 誘発クローヌスと興奮・発汗
  • 眼球クローヌスと興奮・発汗
  • 振戦と腱反射亢進
  • 筋強剛
  • 38℃以上の発熱+眼球クローヌスor誘発クローヌス

Hunter criteriaは感度84%、特異度97%と精度が高いのでよく使われている基準です。

セロトニン症候群の治療

セロトニン症候群の治療
  • セロトニン作動薬の中止
  • ベンゾジアゼピンによる鎮静
  • シプロへプタジン(ペリアクチン)

基本はセロトニン作動薬の中止です。

興奮がみられる場合の鎮静としてベンゾジアゼピン投与を行いますが、過量内服の場合はベンゾジアゼピンも一緒に過量内服している場合もあるので、症例に応じて使用を考えることになります。

シプロへプタジン(ペリアクチン)は抗ヒスタミン薬に分類される抗アレルギー薬ですが、セロトニン拮抗作用がありセロトニン症候群に使用することがあります。

軽症であれば必ず投与する必要は無く、セロトニン中止、ベンゾジアゼピン投与を行った上でも興奮、頻脈が続くような重症例において使用します。

ペリアクチンは日本では点滴製剤が無いので、投与するならば内服になります。

自発的に内服してもらうのは難しいはずなので、胃管挿入して投与することになります。

まとめ

セロトニン症候群について、原因薬剤、症状・診断、治療について基本を解説しました。

薬物過量内服のほとんどは経過観察で良いことが多いのは事実ですが、セロトニン症候群のように重症化する病態が隠れていることがあるため、基本を知っておくことが重要です。

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