わ、開放骨折だ!確か予防的抗菌薬が必要だったけど、何を使えばいいのかな?セファゾリン?
これはGustiloⅢ型の開放骨折だね。グラム陰性桿菌のカバーも考える必要があるよ!
GustiloⅢ型??
目次
開放骨折のGustilo分類
開放骨折の分類としてGustilo分類というものがあります。
以下の表を参考にしてください。
後述しますが、Gustilo分類によって抗菌薬のレジメや投与期間が変わってくるので重要です。
GustiloⅢ型の創のサイズについて補足です。
Ⅲに関してはup to dateでは「Any size」となっていますが、同じ文献を引用しているはずのEASTガイドラインでは「10cm以上」との記載があります。
おそらく10cmは厳密なものではなく、だいたい10cm以上の開放骨折であれば汚染や軟部組織損傷も大きくなる、という事だと思います。
サイズというよりは、「デブリが必要な汚染がある」ということがⅡとⅢを分けている本質です。
GustiloⅢ型のABCについて、
Bが創の被覆不可(つまり皮弁が必要)、Cが血管損傷を伴う(つまり血管修復が必要)かどうかで分かれます。
開放骨折の予防的抗菌薬のレジメ
開放骨折の予防的抗菌薬のレジメはGusitlo分類によって変わります。
GustiloⅠとⅡはグラム陽性菌をカバーしレジメは同じです。
GustiloⅢ型はグラム陰性桿菌をカバーする必要があります。
また土壌汚染や水による汚染の有無によってカバーすべき菌が変わるので少し複雑ですが、以下にup to dateから引用した表を紹介します。
開放骨折の予防的抗菌薬(up to dateより)
- GustiloⅠ orⅡ:創閉鎖から24時間
- GustiloⅢ:72時間または創閉鎖から24時間
GustiloⅢ型でアミノグリコシドは必要か?
アミノグリコシドってそもそも普段ほとんど使わないですよね?
なぜ開放骨折の時だけ使われているのか不思議なのですが、どうやらこのレジメが作られたのがかなり古い時代だったからのようです。
要はGustiloⅢ型ではグラム陰性菌をカバーしよう、というのであればセフトリアキソンだけで十分では?
という疑問にアプローチした研究を簡単に紹介します。
GustiloⅢ型の開放骨折に対して新しいレジメ(セフトリアキソンのみ)を投与するプロトコールを作り、以前のアミノグリコシドありのプロトコールと軟部組織感染の発生率を比較した試験です。
結果はアミノグリコシドありが20.4%、アミノグリコシド無しの新しいプロトコールが24.7%で有意差はありませんでした。
有意差は無いもののアミノグリコシドありのほうが若干感染率が低いのが気になりますが、著者はアミノグリコシドの投与を減らすことができるかもしれないと述べています。
この研究結果のみでアミノグリコシド無しで大丈夫!と言って良いかは不明です。
しかし水による汚染が無ければ緑膿菌カバーは不要という理屈からすると、セフトリアキソンでグラム陰性桿菌をカバーすれば十分という考え方は納得できます。
まとめ
開放骨折のGustilo分類と、それによる予防的抗菌薬のレジメについて解説しました。
アミノグリコシドという普段使わない抗菌薬が出てくるので少しややこしいですが、投与量を忘れた時はこの記事に戻って確認してください。
整形外科の先生と相談して、場合によってはセフトリアキソンのみでも良いかもしれませんん。
開放骨折の時には破傷風予防も重要です。
破傷風予防に関しては、救急外来での破傷風トキソイドの適応の考え方【初心者向けに解説】、の記事もよければ参考にしてください。