救急外来に来た患者さんの採血結果が返ってきてBUNが80、クレアチニンが5と腎機能がめちゃくちゃ悪い!となった時に、
緊急で透析をすべきか、それとももう少し様子を見ていいのか・・・なんて悩むことありませんか?
緊急透析をするのであれば透析用のカテーテルを挿入したり、腎臓内科の先生をコールしたり、臨床学技師さんに連絡したりと、準備を始めなければいけません。
でもそもそも緊急透析の適応ってどうだっけ?とならないためにこの記事では緊急透析の適応の覚え方について解説していきます。
目次
緊急透析のAIUEO
緊急透析の適応はAIUEOの頭文字をからはじまる5つの病態で整理できます。
- A:Acidosis(代謝性アシドーシス)
- I: Intoxication(中毒)
- U:Uremia(尿毒症)
- E:Electrolytis(電解質異常)
- O:Overload(溢水)
それぞれの病態についてさらに詳しく説明していきます。
Acidosis(代謝性アシドーシス)
重度の代謝性アシドーシスがあり、アシデミアの状態であれば緊急透析を検討する必要があります。一般的な目安としてpH7.15未満などが言われています。
ですが、ここでは単にpHの値だけでは決められないことを強調しておきます。
まずアシドーシスの原因が何か?を考えること重要です。
例えばショックによる乳酸アシドーシスやDKAによるけとアシドーシスであれば原因となる疾患を治療することがアシデミアの改善につながるので、原疾患の治療が重要です。
もちろん原疾患の治療を行ってもアシドーシスが進行する場合は透析が選択肢に入ってきます。
ですが、透析はあくまでも対症療法なので、原疾患の治療の目処が立っていなければいずれはジリ貧となります。
緊急透析が優先される状況としては、腎不全そのものがアシデミアの原因となっている場合です。
導入文でもお話した通り、緊急透析と言っても準備にある程度時間がかかるので、重度のアシデミアがある場合はメイロン(重炭酸イオン)の投与で時間をかせぐ必要がある場合があります。
Intoxication(中毒):CATMEALで覚える
中毒物質を除去する目的で緊急透析を行う場合があります。
大事なポイントとして、透析で除去できる中毒物質は限られている、ということです。
- 分子量が小さい
- 分布容積(Vd)が小さい
- タンパク結合率(PBR)が低い物質
- 水溶性が高い
覚え方としてはCATMEALがあります。
- C:Carbamazepine/Caffeine
- A:Antiepileptic drug
- T:Theophylline
- M:Methanol
- E:Ethylene glycol
- A:Aspirin
- L:Lithium
これらはあくまでも物質の除去を目的とした透析適応です。
上記以外の薬物でも腎毒性のある薬による中毒で、アシデミアや尿毒症の症状が出れば透析の適応となりえます。
Uremia(尿毒症)
尿毒症の症状により意識障害などが出現していれば緊急透析の適応となります。一般的にはBUNの値のみでは判断しません。
Electrolytis(電解質異常)
多くは高カリウム血症で適応となります。
カリウムの値のみでは判断できませんが目安として6mEq/Lを超えてきたら注意が必要です。
心電図でP波が消失していれば心室性不整脈となるリスクが高まっていると考えられるため急ぐ必要があります。
透析までの時間稼ぎとして、カルチコール投与、グルコースインスリン療法(GI療法)、メイロン投与などがあります。
重要な点として、GI療法やメイロン投与はあくまでもその場しのぎを方法です。
細胞内に一時的にカリウムを移動させているだけなので効果はせいぜい数時間です。
GI療法をして、カリウムが下がったからと言って帰宅させていはいけません。
Overload(溢水)
肺水腫を起こしていて、低酸素血症となっていれば透析による除水を考慮すべき状況です。
透析未導入で腎機能が完全に廃絶していないのであれば、ラシックスで利尿をかけるという選択肢もありますが、粘りすぎてはいけません。
また、腎不全による肺水腫なのか、心不全による肺水腫なのかの鑑別も重要です。
一時的な後負荷増大による心原性肺水腫であれば、NIVや血圧コントロールのみで落ち着くこともあります。
また心不全であっても体液貯留が著明で尿量全く出ていない、という状況であれば透析による除水を行う必要があるでしょう。
まとめ
緊急透析のAIUEOについて紹介しました。
単純な数字のみで判断できないことが多いのですが、目の前の症例がAIUEOのどの項目に当てはまっているのかを整理していくことで、方針が見えてくるはずです。