発熱性好中球減少症の救急外来での考え方|定義・MASCCスコア・抗菌薬

研修医・若手医師
60才男性

来院10日前に化学療法の点滴を受けた。来院当日朝より37.8℃の発熱あり、救急外来を自力受診。 

とりあえず見た目は元気そうだけど、化学療法中の発熱って入院した方がいいのかな?

好中球が500未満になってるね
発熱性好中球減少症としてMASCCスコアを評価しよう。
抗菌薬投与も必要だから血液培養も忘れずにね!

MASCCスコア??

目次

発熱性好中球減少症の定義

日本臨床腫瘍医学会の定義は以下の通りです。

発熱性好中球減少症の定義
  1. 好中球が500/μL未満または1000/μL未満で48時間以内に500/μL未満に減少すると予測される状態
    かつ
  2. 腋下温37.5℃以上(口腔内温38℃以上)の発熱を生じた場合

ちなみにIDSAの発熱の定義は

「1回の口腔内温38.3℃以上または口腔内温38℃以上が1時間続く状態」

と定義されています。

しかし日本では口腔内温を測定する習慣があまり無く、日本の発熱性好中球減少症に関する臨床試験は「腋下温37.5℃以上(口腔内温38℃以上)の発熱」の定義で実施されているため、こちらを基本に考えるで大きな問題は無いでしょう。

 厳密には定義の異なる海外での臨床試験の結果を適応する場合に「つっこまれる」かもしれませんが、個人的には誤差の範囲だと思います。

発熱性好中球減少症のリスク評価|MASCCスコアとは

発熱性好中球減少症のリスクを症状から分類したのがMASCCスコアです。

注意点としては、MASCCスコアで低リスク=外来治療ではないということです。

あくまでも外来治療が選択肢となり得る、という理解です。

まずすでにキノロン系薬の予防投与がされている場合は入院して抗菌薬静脈投与の適応となります。

また外来治療を選択する場合は介護者がいること、病院へのアクセスや救急受診をすぐできる環境などが前提となります。

もちろん主治医の意向も重要になります。

夜間などで迷ったら入院させておくのが無難かもしれません。

発熱性好中球減少症に対する抗菌薬の考え方

発熱性好中球減少症の時の抗菌薬の原則は緑膿菌をカバーすることです。

セフェピムは発熱性好中球減少症が適応症の一つとなっており使いやすいですが、ピペラシリン・タゾバクタムやメロぺネムも候補となります。

ESBLの検出歴があるからメロペネム、嫌気性菌のカバーも必要そうならピペラシリン・タゾバクタムというように考える場合もあります

MRSAはルーチンでカバーする必要は無いですが、以下の場合には抗MRSA薬を併用することになります。

発熱性好中球減少で抗MRSA薬を併用するとき
  • 血行動態不安定
  • 軟部組織感染症
  • CRBSIの疑い
  • 肺炎
  • MRSAの検出歴あり

まとめ

発熱性好中球減少症の対応について解説しました。

一見元気そうに見えてもあっという間に重症化してしまう可能性があるのが発熱性好中球減少症の難しいところです。

定義もリスク評価もどこかで線を引かなければいけないものであり、絶対的なものではありません。

特に平日日中であれば主治医と相談して方針を決定するようにするのが妥当です。

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