「お母さんが〇〇病院へ救急搬送されました。入院が必要なのですぐに病院まで来てください」
突然こんな電話がかかってきて、急いで病院へ駆けつけるという事が誰の身にも起こりえます。
入院の時に医師から病状説明を受けることになるのですが、ただでさえ気が動転している時なので、話の内容が十分頭に入ってこないという事がありえます。
- すでに説明を受けたけれど今ひとつピンときていない
- ご高齢の家族がいて、いつかはその日が来るかもしれない
という人に向けて、
時間がある今だからできる、病院ではなかなかできない詳しい説明をしたいと思います
目次
緊急入院の時に家族へ医師から説明される事
緊急入院の説明の時、ひととおりの病状説明の後に医師からこんな確認をされるはずです。
「もしも心臓が止まってしまった時には、心臓マッサージや人工呼吸器での治療を希望されますか?」
説明の仕方は医師によっても、そして患者さんの病状や元々の状態によっても変わりますが、確認されている内容の本質は同じです。
ご家族としてみれば、確かに少ししんどそうだけど話もできるし心臓が止まった時のことなんて想像できない、という気持ちになる方が多いのではないでしょうか
しかし、医師からすると
「入院時にはそこそこ元気だった方が、入院後に突然急変してあっという間に心肺停止になる」という経験は珍しくありません。
心肺停止になってしまってからでは、患者さん本人はもちろんご家族にも延命処置になりうる治療を行うかどうかを説明して、じっくり話し合っていただく時間はありません。
もちろんすぐに結論が出せないのも無理はありません。
ただし、少なくとも入院の時点で家族内での話し合いを始めていただく必要があるのです。
高齢の方や重症度が高い患者さんが心停止になった時点で、状況は厳しい
まず大前提として、若い方や、ごく軽症での入院時はそもそも心臓マッサージの話なんて基本的にありません。
それは、そもそも心肺停止になる可能性が極めて低いのと、元々の状態が悪くないので、蘇生できる可能性があるため、もしもの時も心臓マッサージや人工呼吸器を使用することが妥当であると判断できるからです。
一方で、ご高齢の方や重症度が高い患者さんが緊急入院した場合は状況は異なります。
多くの医師は、ご高齢の方や重症度が高い患者が心停止になった時は、蘇生処置を行っても効果はほぼ期待できないと考えています。
すでに治療をはじめている状態にも関わらず心停止になったということは、病気の勢いが強すぎるか高齢であり本人の体力が持たなかったのいずれかと考える事ができるからです。
効果が期待できない状況で、患者さんの体に負担をかける心臓マッサージなどは避けたいというのが医師の気持ちですし、最終的にはご家族やご本人が辛い思いをされるのではないと心配しているのです。
実際は、入院の時点では「今すぐは決められない」、「いったん持ち帰って家族と話し合いたい」となる事も多いです。
これはもちろん仕方がない事ですし、可能であれば時間をかけてご本人・ご家族で話し合っていただきたい事です。ですが心停止になるのが入院してすぐに起こることもありえます。
「入院時に決められない」となれば、暫定的に「心臓マッサージなどの処置は全てする」ということになります。
そして、処置をしながらご家族を呼んでやはり「治療に反応がないので心臓マッサージを中止しましょう」となる事が多いです。
心臓マッサージをすると肋骨が折れることもあります。
点滴や採血をしようとして手足にたくさん針をさします(心肺停止の患者さんの点滴は取りにくいので傷がたくさんできます。
ダメかもしれないけど、やるだけのことはやったという状況で納得したい、という気持ちもあるかもしれません。
ですが効果が期待できないのであれば、できるだけ辛くない治療に留めてあげるのも一つの選択肢です。
いったん「心臓マッサージはしない」と決めたとしても、後から変更できる
知っておいていただきたいこととして、入院時に「心臓マッサージはしない」と決めたとしても、
考えが変われば、後からやっぱり「心臓マッサージしてほしい」と方針を変更する事が可能です。
ここはよく誤解されている点で、一度決めたらくつがえせないと思い込んでしまって、必要以上にプレッシャーを感じてしまう事がありえます。
なので入院時には暫定的にする or しないを決めておいて、後から家族で話しあってから最終的に決めるという事が可能です。
できれば暫定的で結構ですので入院時点での考えを伝えていただけるとありがたいです。
まとめ
緊急入院の時に家族が考えておくべきこと、についてお話しました。
- 家族が緊急入院時にした時にはご高齢または重症であれば心臓マッサージをするかどうかを聞かれる事が多い
- 治療しているにも関わらず心肺停止になったという事は見込みは厳しい
- 心臓マッサージするかしないかの決定は後からでも変更可能
誰でもいつかは心臓が止まる時が来ます。
その時をどういう形で迎えたいか。
ご本人がお元気なうちにご家族で話し合っておくことができればみんなが納得できる結論が出せるはずです。