タイトルを読んで、意外と感じる人もおられるかもしれませんし、人によっては「最初から専門医が診てくれるならそれでいい」と感じるかもしれません。
結論から言うと、時間外に救急外来に搬送された(自力受診でも同様です)時に救急医が診療を担当する可能性は高くありません。
そして自分の病気の専門医が最初から見てくれる可能性も高くありません。
これらの理由について、できるだけわかりやすくお話ししていきます。
目次
救急外来は大きく3つのパターンに分けられる
救急車を呼んだ場合、当たり前ですが救急外来を持つ病院に搬送されます。ところが一言で「救急外来」と言っても同じじゃないんです。
- 24時間365日救急医が救急外来を受診した患者さんを診療する
- 平日日中のみ救急医が診療。夜間と休日は内科1人、外科1人体制
- 基本的に救急医が病院にいない。昼も夜も内科医、外科医がそれぞれ対応
あくまでも私個人の感覚ですが、①の24時間救急医が対応している病院はおそらく全体の1割くらいだと思います。②の日中のみ救急医がいる病院ですら決して多くなく、多くの病院が③のパターンで、内科医と外科医が業務の合間に救急車に対応しています。
なぜ①の病院が少ないかというと、24時間体制を維持するためには救急医が大勢必要だからです。2-3人では全然足りず、少なくとも7-8人、できれば10人以上必要です。
それに対し②の病院であれば2-3人いればよく、最悪1人いればなんとかなります。
救急科専門医は増えてきているのですが、実際に救急外来で診療を行う救急医はまだまだ少ないのが現状です。
救急医については「救急医って何する人?」の記事もぜひ参照ください
救急外来で最初から専門医が診察する可能性は高くない
夜間・休日に救急外来を受診した時に最初から専門医が診察することは稀です。
※すでに別の病院で診断がついて、専門医宛の紹介状を持って受診した場合は専門医が診察します
理由は2つです
1つ目は受診した時点では何科の病気かわからない事が多いからです
「胃が痛い」ので内視鏡検査をしてもらおうと救急外来を受診したところ、心筋梗塞だった
「胸が痛い」ので心臓の病気を心配して受診したが、診察の結果原因は肺炎だった
というような事は決して珍しくありません。というか“救急外来あるある”です。
何科の病気かわからない時点では、その病気の専門医に診てもらうのは不可能ですよね
2つ目は夜間・休日にはほとんどの専門医が病院にいないからです
前述のように多くの病院で内科1人、外科1人の当直ですが、実際のところは今日は「循環器内科と整形外科」、明日は「糖尿病内科と呼吸器外科」というように当直している医師の専門は日によって異なります。たまたまその日に当直している医師の専門と自分の病気が一致すればラッキーですが、その可能性は低いでしょう。
なので「頭が痛い」であっても「お腹が痛い」であってもその日の内科当直が循環器内科医であれば循環器内科医が診察をします。
診察した上で、緊急で各専門科による診察・治療が必要と判断すれば、専門医を家から呼び出します。
例えば胃潰瘍からの出血が疑われ、内視鏡での止血が必要だとなれば消化器内科を呼んで処置をしてもらいます。
このように問題なく診療が進むことも多いですが、そもそも臓器別の専門医が自分の専門以外の病気の救急対応を学ぶ機会が十分確保されてるとは言えません。
おそらく初期研修の2年間と、それ以降は実際に救急当直をやりながら自分で勉強していくという医師がほとんどでしょう。
なので救急外来での診療能力は医師によってバラつきが大きいです
救急医はすぐには増えない
この状況を改善していくためには24時間救急医が救急外来で診療できるように救急医を増やすということが理想ですが、診療科を自由に選べる日本では救急医が短期間で劇的に増えることは期待できません。
ではどうするか
今の仕組みのまま、各科専門医が自分の専門以外の病気の救急対応を身につける機会を確保する。そして遠隔診療の技術などを駆使して24時間救急医がいる病院が支援する、などが現実的です
まずはこの現状を救急外来を受診する患者さんも知っておいていただく必要があると思い、お話ししました。
まとめ
- 救急医が24時間救急外来で診察をする病院は少ない
- 救急外来で最初から専門医が診察することは少ない
- 各科専門医が自分の専門以外の病気の救急対応を身につけるとともに、それを救急医が支援する必要がある