髄膜炎を疑ったら腰椎穿刺をするっていうのはわかるけど、実際どんな症例にすればいいの?
腰椎穿刺の禁忌ってなんだっけ?
腰椎穿刺する前には頭部CTは必須??
この記事ではこれらの疑問を解決するために、細菌性髄膜炎を疑う時の腰椎穿刺の適応と禁忌の考え方、腰椎穿刺前の頭部CTについて解説していきます。
目次
腰椎穿刺の適応
結論ですが、細菌性髄膜炎を疑った時点で腰椎穿刺の適応です。
「だからそれはどんな時なの?」という当然の疑問がわくと思いますが、明確な基準が無いというのが現状です。
古典的には「発熱・頭痛・意識障害のいずれも無ければ髄膜炎は無い」と言われています。
でも逆に言えば3つのうち一つでもあれば髄膜炎が否定できない、ということなんです。
一番しっくりくるのは「腰椎穿刺するか迷った時が腰椎穿刺の適応だ」という教えです(いつ誰が言ったかはわかりませんが・・・)。
要は明確な基準を作るのは難しいかつ見逃すと重篤なので、腰椎穿刺の閾値を下げるのが最も現実的ということです。
後述する禁忌に注意すれば腰椎穿刺はそこまでリスクの高い検査ではありません。
腰椎穿刺の禁忌の考え方
- 頭蓋内圧亢進
- 硬膜外膿瘍
- 血小板減少・凝固障害
ちなみにup to dateには「腰椎穿刺の絶対禁忌は無いが、以下の状況では注意が必要である」として上記3つの状況が紹介されています。
ただ絶対禁忌では無いとはいっても、実質的には禁忌と思って良いでしょう。
上記が疑われる状況で止むを得ず腰椎穿刺を実施する場合は複数の医師、特に入院後の診療を担当する診療科との協議は必須と考えます。
禁忌に該当する可能性がある状況で細菌性髄膜炎が疑われる場合には、髄膜炎量の抗菌薬を経験的に投与する、という選択肢もあります。
その場合は原則治療をやりきるということになる可能性が高いため、それはそれでデメリットがあります。
個人的には、禁忌となりうる状況で腰椎穿刺を強行するよりは髄膜炎量の抗菌薬を開始する方が危険は少ないと思っています。
腰椎穿刺前に頭部CTは必要か
「腰椎穿刺前に頭部CTとるのは常識」って思っている人も少なくないと思います。
実は腰椎穿刺前の頭部CTの必要性についてはずっと議論され続けており、頭部CTが推奨される基準もいくつかあります。
CIDに2018年に掲載された論文を簡単に紹介します。
各種ガイドラインにおける細菌性髄膜炎が疑われた場合の頭部CTの適応の遵守率と、死亡率や神経学的予後との関連を調べた研究です。
パッと見でIDSAの基準が一番厳しくて(CT閾値が低い)、Swedish Guidelineが一番甘い(CT閾値が高い)のがわかりますよね。
この結果どうなったか、というとIDSAの基準に従った場合が最も予後が悪かったのです。
つまり腰椎穿刺前のCT閾値が低いほど、予後が悪かったということなんです。
またどのガイドラインでもCTを推奨しない症例にCTを行った場合は予後が悪化している、という結果でした。
やはり頭部CTによって抗菌薬投与が遅れることが原因である、と考察されています。
「腰椎穿刺前には頭部CT」という常識を考え直さなければならないかもしれません。
まとめ
細菌性髄膜炎の疑った時の腰椎穿刺の適応と禁忌、腰椎穿刺前の頭部CTの考え方について解説しました。
細菌性髄膜炎を疑っている時点で腰椎穿刺の適応です。
禁忌に注意しつつ、場合によっては腰椎穿刺をせずに髄膜炎としての治療を開始することを考慮する必要もあります。
腰椎穿刺前には基本頭部CT、という常識は今後変わる可能性があります。