下血の鑑別|救急外来での消化管出血の考え方

研修医・若手医師

「突然真っ黒いドロッとした便が出ました。」

「便器が真っ赤になるような便が出ました。」

血便と言われたものの実際に直腸診してみると赤とも黒とも言えない暗赤色の便が出ている・・・

こんな時に救急外来でどう考えていけば良いでしょうか?

救急外来での下血の鑑別について基本からお話ししていきます。

下血の鑑別①タール便か血便か

下血という用語について整理します。

下血は「肛門から血液を含む成分が排出されること」を指し、原因は上部・下部いずれの場合もあります。

ただし「下血は上部消化管出血によるタール便」を指し、「血便は下部消化管出血による鮮血便」という解説をしているものもあります。

下血という用語の使い方は正直どちらでも良いのですが、要は便が黒いか赤いかで出血部位が違うということが理解できていれば十分です。

誤解が生じやすいので「下血」という用語を使わずに、「タール便」や「血便」という表現で良いのでは、と個人的に思っています。

タール便:上部消化管出血

タール便であれば上部消化管出血を考えます。

上部消化管出血の鑑別の代表は以下のものになります。

上部消化管出血の鑑別
  • 胃十二指腸潰瘍
  • 食道静脈瘤破裂
  • マロリーワイス症候群
  • 大動脈瘤の十二指腸への穿通

上部消化管出血が疑われる症例での入院治療の適応についての判断基準としてGlasgow-Blatchfordスコアというものがあります。

これについては、上部消化管出血に対する入院治療の予測にはGlasgow-Blatchfordスコアが優れている、の記事で解説しているので参考にしてください。

大動脈瘤の十二指腸への穿通は比較的稀ですが、致死的になるので少し説明しておきます。

大動脈瘤が十二指腸に穿通することで結果として吐血・下血で来院する場合があります。

この場合は内視鏡で止血を得ることは困難で手術が必要になります。

一般的に上部消化管出血が疑われる場合はルーチンでの造影CTは不要ですが、

大動脈瘤が指摘されている人が吐血で来院された場合は造影CTをするのが良いでしょう。

血便:下部消化管出血

血便であれば下部消化管出血を考えます。

下部消化管出血の鑑別の代表は以下のものです。

下部消化管出血の鑑別
  • 憩室出血
  • 虚血性腸炎
  • 直腸潰瘍

頻度として多いのは憩室出血と虚血性腸炎です。

この2つ疾患の特徴の違いは腹痛の有無です。

虚血性腸炎は“炎”とつくだけあって炎症が起こっているため痛みが出ます。自発痛、圧痛ともに見られることが多いです。

CTでは結腸の一部(好発部位は左側結腸)に浮腫状変化が見られます。

一方で憩室出血は基本的に腹痛を伴わない血便が特徴です。

 憩室出血は痛みが無いですが、憩室炎の場合は“炎症”なので痛みが出ます。

下血の鑑別②暗赤色の便の考え方

暗赤色の便の考え方
  • 上部で大量に出血
  • 下部で少量の出血

    バイタルサイン不安定なら上部の可能性あり
    造影CTで出血源確認を

原則はタール便なら上部消化管出血、血便なら下部消化管出血というお話しをしました。

では暗赤色というどっちともつかない色の場合は上部でしょうか?下部でしょうか?

結論から言うと、下部で出血量が少ない、または上部で出血量が多いの2パターンが考えられます。

血液が消化管を通過している時間が長いほど黒色に変化していきます。

なので基本的には出血源が肛門に近づくほど色が赤くなります。

出血部位以外に便の色に影響するのが出血量です。

上部でも出血量が大量であれば、血液が黒色に変化しきる前に肛門へ到達する場合があります。

逆に下部でも出血量が少なくて肛門に到達するまでに時間がかかれば、ある程度黒色へと変化します。

結果としていずれも暗赤色の便となる場合があるのです。

ではどうやって上部か下部か判断していくか。

ひとつはバイタルサインです。

上部で暗赤色の便が出ている場合は出血量が大量でありバイタルサインが全く変化しないということは考えにくいです。

もう一つは造影CTで出血源を確認することです。

明らかに上部消化管出血であることが疑われる場合には造影CTは必須ではありませんが、出血源に悩むような場合は造影CTで評価が必要です。

また下部消化管出血が疑われる場合には、造影剤の血管外漏出像の有無によって緊急内視鏡の適応を判断します。

まとめ

救急外来での下血の鑑別についてお話ししました。

下血といっても黒なのか、赤なのか色によって考え方を変える必要があります。

暗赤色という微妙な色の場合はバイタルサイン、造影CTなどの情報を合わせて判断していくことになります。

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